東京国際映画祭2003:コンペティション部門『フェザーズ・イン・マイ・ヘッド』(原題)ティーチ・イン開催!
最愛の息子を失い心を閉ざした母親が、やがてその事実に向き合い自分自身を取り戻して行く過程を、豊かで繊細な自然の映像を有機的に盛り込みながら描いた心の再生のドラマがベルギー映画『フェザーズ・イン・マイ・ヘッド』(原題)。映画祭に参加したトマ・ドゥティエール監督と、母親役のソフィー・ミュズールのお二人は、それぞれ長篇劇場映画としては本作がデビュー作であり、またプライベートでもパートナー同士だ。
自然界やそこに生きる生物の描写が印象的な本作だが、ドゥティエール監督自身が大のバード・ウォッチャーで、出てくる場所もよく鳥を見に行く場所だとか。また、劇中の子供、青年、夫は全て自分自身の分身だという。また彼は、映画作りに関しては映画学校ではなく映画館で学び、直感を大事にし有機的な映画つくりを心掛けている。「劇中で、ヒロインが野菜を洗っているシーンは、彼女がそれを赤ん坊に見立てて洗っている、そんな気持ちを表すために使いました。私はフランス映画はあまり好きではありません。それらは一般的に心理的だったり、あるいは台詞が多すぎると感じるからで、それらとは違うものをということから、人の皮膚のアップを多用したり、自然界のポートレートを作るという意味で、虫、動物、鳥そして水を多用しているんです。ヒロインが狂気の世界に入っていくほど、フレーム内で空が占める割合が大きくなるのも、そうしたことをあらわしています」。
そんな監督の姿勢を反映し、ヒロインも台詞が極端に少ない。ソフィーは今回の役柄を振り返り、「彼女は映画を通じて子供の死を受け入れず拒否しています。内面では苦しんでいますが、自分ではその悲しみを意識していない。何も変わったことは無いふりをして生活しているんです。だから息子の葬式の場面も、何故他の人が悲しんでいるのかしら?という気持ちで演じたんです」と、最初の作品が様々な事を学ぶよき機会だったと語った。
なお、『フェザーズ・イン・マイ・ヘッド』は邦題が『心の羽根』となり、2004年春よりユーロスペースでのロードショー公開が決定した。
(宮田晴夫)
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