『オーメン』は先頃大ヒットした『THE EYE【アイ】』も記憶に新しいパン兄弟が製作・脚本・編集を担当し、彼らの作品等でアシスタント・ディレクターをつとめたこともある新人タマラック・カムットタマノートを監督としてデビューさせた最新作。3人の青年がそれぞれであった老婆、若い女性、少年。その出会いによってもたらされる不可思議な出来事を有名なハリウッド製オカルト映画と同タイトルの作品らしく、不吉な前兆によるサスペンス要素を盛り込んで描いた作品だが、その基調となっているのは、タイ原題が示すとおり輪廻転生を盛り込んだラブ・ストーリーだ。兄弟の監督デビュー作(正確にはオキサイドが監督、ダニーが編集)である『タイム・リセット 運命からの逃走』も、前世のカルマに捕えられた恋人を救うために、5人の人間の命を救おうとする青年の話だったように、このテーマにはかなり思い入れが感じられる。
 11月7日のオーチャードホールでの上映後には、今回が3度目の来日となるオキサイド・パンが舞台に立ち、ティーチ・インが行われた。
 今回の作品で主人公の3人組は、日本ならジャニーズ系あたりを彷彿させるようなイケメンが揃っている。実際彼らは、タイで非常に人気のあるD2Bというポップ・グループで、彼らの主演作で映画をというグループの事務所サイドからの依頼が企画の発端だったそうだ。「ただ自分たちとしては所謂ティーンものらしいラブ・ストーリーは避けたかったので、もう少し深みが有って変わった作品にしようと思ったんです。観客の半分以上は彼らのファンだけど、シリアスな作品にってね」(ダニー・パン)。そして仏教思想に基づいた既視感などの要素から脚本を膨らませ、「過去を変えると現在は変わってしまい、現在行った行為は未来に影響する。過去・現在・未来は全て繋がっている」という物語を編み上げた。また編集面では、テンポよくすすませることを念頭におきつつ、ホラーとラブ・ストーリーの融合を試みた。現段階では、映画祭以外での日本公開は未定ということだが、今回の上映をはずみに公開に結び付けたいと語ったオキサイド。「来年も、是非作品を持ってきたい」とファンには嬉しい言葉で、ティーチインを締めくくった。
(宮田晴夫)

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