ちょっといい加減で調子のいい男・タカオと、孤独を抱えた若い女マダ。そんな彼らが一緒に旅をすることになった老人は、たまには休暇を取りたいとその間の代理を務める聖人を求めて地上に降り立った神様だった。陽性なバイタリティに満ちたキャラクターが、カラフルな色彩に満ちた風景の中で繰り広げる、奇想天外でハートフルなロード・ムービーが『ゴッド イズ ブラジリアン』だ。ブラジル本国では今年の初めに公開され、老若男女を問わない広い層の観客に指示され、大ヒットを記録している。
 11月5日のオーチャード・ホールでの上映時には、ブラジル映画界で長いキャリアを誇るカルロス・ディエゲス監督と、プロデューサーのヘナタ・デ・アルメイダ・マガリャインス氏が来場し、上映後にティーチインが行われた。恰幅がよく人懐っこい笑顔が印象的なディエゲス監督は挨拶でも、「黒澤、溝口、大島、北野…日本映画を沢山観てきて、そして日本も愛するようになったので、日本に来れて嬉しい。でも、彼らの作品に描かれてきた、武士や侍とは未だ会え無いので、帰るまでには是非あいたいね」と、その作品同様ユーモアを披露。因みにお二人は、22年来のご夫婦ということで、まさに公私共々のパートナー同士なのだ。
 この作品の原作はブラジルでは非常に有名な短編小説とのこと。そこで描かれた神のキャラクターは、ブラジル人が思い描く神のイメージに基づいているがで描いているが、宗教的な意味合いはなく文学的なキャラクターとして捉えているそうだ。ここで描かれた神は、かなり擬人化されると同時に、人間の持つ完璧ではない部分を祝福している。撮影中、作家ボルヘスの「楽園というのはそこにすんでいるものであって、地獄というのはそこに住んでいる事をしらないものだ」という言葉が常にあったと話すディ会下ス監督は、本作のメッセージを「映画をシンプルなメッセージで伝えてしまうことは、とても難しいことですが、人間は完璧ではないし、我々は神にはなれな。けれどそうした部分を受け入れた上で、それでも幸せを求めようということですね。」と語った。またファンタジー作品といっても、劇中描かれる様々なエピソードの社会的な背景は、全て事実に基づいたものなのだ。「ブラジルは貧富の差が大きい国で、それ故に社会的な問題も多い。しかし悲惨なことや社会的な問題もあるけれど、そうしたこともユーモアを交えて描いていくのが私の方針なんだ。ユーモアは知性の現れだと思うからね。」(ディエゲス監督)。
 なお美しい撮影は、監督自身が熟知している監督の故郷で行われ、ポストプロダクションの段階でも、色彩等多岐の部分で処理が加えられて、監督自身が最初から明確に持っていたビジョンが再現されたそうだ。
 なお『ゴッド イズ ブラジリアン』は、この後11月6日19時20分からル・シネマ2でも上映される。現段階では、日本での配給は未定なので、現段階で確実に観れるこの上映は要チェックだ。
(宮田晴夫)

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