和製ホラー映画ブームの立役者となった『リング』(98)は、アメリカでもゴア・ヴァービンスキー監督により『ザ・リング』(02)リメイクされ、昨年の東京国際映画祭での上映後ロードショー公開されたに日本でも大反響を呼んだが、実はこの作品がリメイクされるのはこれが二度目。実は日本版が公開された翌年にあたる99年には、韓国版が作られていたのだ。それが今回「アジアの風」部門で上映された『リング・ウィルス』で、11月4日のシアター・コクーンでの上映後には、キム・ドンピン監督を迎えてのティーチ・インが行われて、当時のリメイクの背景等についての質疑が行われた。
 本作が製作された99年は、韓国にて日本映画の商業公開がはじまった頃だが、上映作品は映画祭で賞を取ったものという条件がつけられていた(現在こうした条件は無くなった)。相した中で、90年代は数本の日本映画が韓国にてリメイクされたが、安易な企画も少なくなく作品的・興行的ともに成功したものは少なかった。そうした中で、当時監督がオリジナル作品を提案していたプロダクション・サイドから、逆こ提示された企画が『リング・ウィルス』だ。「最初はあまり気乗りがせずに、8割がた断るつもりで原作と日本版のビデオを借りて帰って目を通したところ、特に原作にひかれこれはやって見る価値があるのではないかと思い引き受けました」(監督)。
 リメイクにあたっては日本劇場版が恐怖を追及し成功しているので、同じ方向を取るのではなく、むしろ原作に忠実にミステリーを追って行く作品にしたそうだ。また、韓国版独自のアピール・ポイントは何かとの質問に対しては、あまり明確には出せなかったと振り返る。「アメリカ版が動物虐待をモチーフに取り入れたような独自性は、正直あまり出せなかったと思います。私は原作に忠実な作品を目指し、特に超能力の部分に重きをおきましたが、それは日本のものですし。ただ、超能力という要素を考えた時に、韓国にも土着的な宗教の霊媒師…ムーダンというものがありますので、霊になる娘の母親がムーダンだったという設定にしました。ただ当時あまり余裕が無く、もう少し時間があればそのあたりから韓国的な要素が膨らませられたのでは…とは思います。最近では映画の国境はどんどんなくなっていって、現在韓国映画のリメイク企画がハリウッドで10作品くらいすすんでいます。そうした中で、今後私たちはリメイクをする際に、その国独特のテイストをいれることが必要だと思います。」(監督)。
 なお『リング・ウィルス』は、11月8日10時半よりシアター・コクーンでの上映がある、
(宮田晴夫)

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東京国際映画祭