既に4回に上るアカデミー賞ノミネートをはじめ、世界各国でその作品が高く評価されているスペインの巨匠カルロス・サウラ監督と、史上最年少でスペイン国立バレエ団芸術監督を務めた伝説のダンサー、アイーダ・ゴメスの見事なコラボレーションが、オスカー・ワイルド原作の悲劇を、斬新な構造で究極の愛と欲望と死の物語として結実した映画『サロメ』が、いよいよ11月から公開される。それに先駆け、本作で本人及び舞台上でのサロメを演じ、芸術監督を務めたアイーダ・ゴメスが来日を果たし、10月14日に有楽町朝日ホールで開催された特別試写会の舞台に立った。
 この日ゴメスは、舞台上でそのエネルギッシュかつ華麗な舞踏を披露し、会場の多くの観客を陶然と魅了する。この日の演目“シレンシオ・ラスガド(内面からの沈黙)”は、『サロメ』の映画版には出てこないが、来年2月の舞台版『サロメ』の日本公演では是非演じてみたいと曲だとか。映画の試写のみならず舞台の一端も垣間見れたという、舞踊ファンには堪らないプレゼントとなった。
 また、この日は自身もアルゼンチンでタンゴショーを行うなど踊りに魅せられた女優、藤原紀香がプレゼンターとして駆けつけ、全身全霊を注いでの舞踏を披露したゴメスに花束をプレゼント。「ものすごい迫力に圧倒されました。踊りは言葉がない分、全身全霊で感情を研ぎ澄ませて表現しなければならないんです。一足先に『サロメ』も拝見し、アイーダさん演じるサロメの、愛する人から愛しても愛しても振り向いてもらえない苦悩とか嫉妬とかが、語らずとも踊り完璧に表現されていて感動しました。」(藤原)と感激のコメントを述べた。
 今回の映画に『サロメ』を選んだ理由を尋ねられたゴメスは、まだ息を上がらせたまま、しかし「私は未だ人の頭を切ったことはないけれど…」とユーモアを交えつつ、「サロメの人物像に心をひかれました。何故なら彼女は非常に感情豊かであり、愛情に対する激しい情熱を持っている女性です。彼女を踊るたびに、自分が女性であることを、ますます実感するのです。また踊りは、私にとって人生の一部です。こうして世界を旅しても、踊りの公演中は通訳を介さなくとも伝えたいことが伝わるということが踊りの素晴らしさね。」(ゴメス)と語った。
 なお、『サロメ』は2003年11月8日よりBunkamura・ル・シネマ他にてロードショー公開予定!また、同じくBunkamuraでは2004年の2月に、本作の舞台版の上演も予定されている。
(宮田晴夫)

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サロメ
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