9月恒例のアジアフォーカス・福岡映画祭が、今年も開幕の日を迎えた。1991年のスタートからの通算観客動員20万人の初日突破が確実視される今年は、12日のオープニング上映から23日までの11日間にわたり、28作品が上映されるほか、関連企画も多岐にわたり、さしずめ9月の福岡はアジア一色に彩られることになる。
 映画祭初日の12日は、まず、50名近い内外のゲストのなかから17名が出席しての記者会見が開かれた。最初に紹介されたのは、イランのマジッド・マジディ監督。今回は、2年前のアメリカ侵攻後のアフガニスタンを題材にしたドキュメンタリー『裸足でヘラートまで』を持っての来福で「ジャーナリスティックになり過ぎないように気をつけた」と。「両岸問題(中国と台湾の問題)が庶民に及ぼす影響を深く考えていた」という『小雨の歌』のリェン・チンホァ監督(台湾)、「みんな(いつかは)死ぬわけで、死ぬまでをどう生きるか考えたのがこの映画」と日本人の死生観に基づく『蕨野行』を70歳を過ぎて撮り上げたベテラン・恩地日出夫監督らがコメント。中国から『ションヤンの酒家』を持って参加のフォ・ジェンチィ監督は「アジアの映画は世界でもますます注目されるようになった。この映画祭のような機会を通じて、もっとアジアの映画を世界に知ってもらえるようになると信じている」とこの特色ある映画祭について述べた。
 本年のオープニング上映作品は、インドの南部ケーララ州のアドゥール・ゴーパーラクリシュナン監督の『シャドー・キル』。上映前の舞台挨拶で、ゴーバーラクリシュナン監督は「この映画祭に招かれて、ひじょうに光栄。このタイトルは、インドの叙事詩“マハーバーラタ”に由来している。この映画は民話が語られるというスタイルのシンプルなストーリーだが、(主人公が)イメージしたものがどんどん現実化していくのがわかると思う。観客には様々な理解のスタイルがあるが、観客が同化していくように目論んだ。シンプルさの落とし穴に落ちずに深く理解してほしい」と語った。
 地方発の映画祭だが、この福岡の映画祭がきっかけとなって海外での上映が決まった例や、制作プロジェクトが動き出した例もあり、アジアの映画人にとっても見過ごせないイベントになっている。観客にとっても、ゲストの監督・俳優らと身近に接することのできる貴重な機会。今年はどんな出会いがあるだろうか、注目したい。(K.MIKUNI)

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