反骨とパンキッシュな魅力溢れる代表作『レポマン』『ウォーカー』が6月27日にDVDリリースされ、また9月には待望の新作『リベンジャーズ・トラジディ』も公開予定のカルトムービーの鬼才アレックス・コックス監督。7月3日HMV渋谷移転5周年記念イベントとして、コックス監督を迎えてのトークショーとサイン回が盛況のうちに開催された。ステージに登場したコックス監督は、スラリとした細身をラフなシャツで包み、コーエン兄弟作品等に出演しているウィリアム・メイシーに気持ち似た顔立ち。穏やかな表情は、反骨とパンクな人というイメージとはちょっと印象を異にするが…
 「『リベンジャーズ・トラジディ』の原作は400年前に書かれたものだけど、作品の本質は現在に通じるものなんだ。はるか昔から連綿と流れ続け、パンクの時代へと繋がる、英国の叛逆精神を描きたかったんだ」と、話を聞くとやはり反骨の人だった。この作品は、2011年のリヴァプールを舞台に、街の支配者に婚約者を毒殺された男が、ヴァイオレンスと恐怖に覆われた街で復讐に乗り出す物語。コックス監督によれば、現段階で最も自分に近く、全てのキャラクターにシンパシーを感じる作品になったそうだ。なお生まれ故郷であるリヴァプールでの撮影について訊ねられたコックス監督は、「懐かしさはあるけれど、あくまで港町という点では横浜や神戸と変わらない。むしろ、川崎で作品を撮りたいと思っているんだ。実際2005年には、撮る予定なんだよ」と、日本のファンには堪らないニュースを披露。昨年放映されたテレビドラマ『私立探偵・濱マイク』の第11話「女と男、男と女」に続く、日本との本格的コラボレーションが今度は劇場で見れそうなのだ。会場の空気も、期待にヒートアップしていく。
 そんな中、件の『〜濱マイク』に出演した田中要次が花束を持って応援に駆けつけた。「日本の監督ってなかなか誉めることがないんですが、コックス監督は誉めてくれるんです。その一言で、とてもやりやすくなる。でももう1回って言われるんだけど(笑)」とコックス監督の演出について語った田中は、映画を観はじめた頃にコックス監督作品と出会い、それ依頼の大ファンだそうだ。「ピストルズのコピーとかをしていたので、『シド アンド ナンシー』はタイムリーだったんです。それからずっとこれを部屋に飾っていました」と言って取り出したのは、額に入った『シド アンド ナンシー』のポストカード。互いに照れつつも、終了後サインを約するコックス監督も、「一緒の撮影は最高のチームによるベストが経験できた。監督冥利につきるものだったよ」とコメント。『リベンジャーズ・トラジディ』のみならず、新たな日本とのコラボレーションへの期待も膨らむトークショーだった。
 なお、『リベンジャーズ・トラジディ』は2003年9月よりユーロスペースにてロードショー!
(宮田晴夫)

□作品紹介
リベンジャーズ・トラジディ