アカデミー賞7部門にノミネートされた『エリザベス』のシェカール・カプール監督の待望の新作『サハラに舞う羽根』は、『アラビアのロレンス』以来かつてなかった壮大なスケールで描かれる愛と友情のスペクタル超大作。

美しいサハラ砂漠が強く印象的であるが、実際のところ砂漠での撮影はかなり困難を極めたと監督は語る。
「そこでの撮影の大変さは、気温の熱さや1000人のエキストラをつかうこと、馬をつかうことなど予測はしていました。けれど、砂丘の形がすぐ変わってしまうことや、ホコリの危険性は予想外のことでした。あと、砂漠の足跡には悩まされました。リハーサルをしていざ撮影にうつると足跡だらけなので、そこから移動して足跡のない綺麗なところで撮影をして、そうして次のシーンにうつる時にまた移動して、ということを繰り返していたので、気がついたら戻るのに5時間くらいかかるような遠いところまで来てしまったり。機材を忘れただの、誰かが迷子になっただの、ヘリを動員して捜索することもありましたね。」

英国文学の古典的名作であるA・E・W・メイスンの原作を、斬新な視点とフレッシュなキャストでつくり上げているが、過去にも7回映画化されているこの作品をなぜ今また映画化しようとしたのだろうか。
「原作や他の映画化作品に強く怒りを感じました。アフリカ人への蔑称や植民地政策に対して肯定的に描かれているような気がしたからです。しかし、原作にある”戦争に行くことを拒否することは、臆病なのか、勇気あることなのか”という問いかけには強くひかれるものがありました。映画には人を多く殺すようなヒーローがありますが、私はこのテーマなら”真のヒーロー”という本質に触れられると思いました。」

繊細な心をもつエリート士官から、浅黒い肌の砂漠の英雄へ、というワイルドな変貌ぶりをみせる主演のヒース・レジャーについては、
「ヒースはクレイジーな俳優だよ。落馬したヒースが100頭の馬が走るなか、別の馬に乗り換えるシーンをスタントマンを使って撮影したところ、あまり面白くなかったんだよ。そうしたら、彼は自分でやる!といってやってしまったんだよ。死んでしまうかもしれないよと言ったら、『そうしたらそれを撮ればいいよ。』とケロッと言うんだからね。後で私は保険会社やお偉いさんに怒られましたけどね。」

次回作『パーニー』はインド人がメインにキャスティングされ舞台もインドになるという。”パーニ”とは「水」の意味。20年後の近未来、水不足に陥り一部の権力者達のみが水を握り人々を支配する世界が描かれるそう。

☆『サハラに舞う羽根』は今秋、みゆき座他全国東宝洋画系にてロードショー!!

(綿野かおり)