ジョニ—・デップ、ヴァネッサ・パラディをキャストに迎えたテリ—・ギリアムの未完の映画『ドン・キホーテ』を、その困難と試練に満ちた撮影現場を追ったドキュメンタリー、それが『ロスト・イン・ラマンチャ』である。

まずクランクインするや否や、まるで聖書にあるような幾多の受難が彼らを待ち構えていた。突発的な洪水によりカメラ機材がダメになるわ、ロシュフォールが重病になるわ、クランクイン6日目にして製作は頓挫に追い込まれる。待機するスタッフ、保険会社とプロデューサーとの軋轢、そのプレッシャーの中でも自分の映画製作における信念を貫こうとするギリアムの姿。

テレビ番組「虎乃門」の“こちとら自腹じゃ!”での辛口映画批評が話題の井筒和幸監督にも、同じ映画監督としてこうしたギリアムの姿には強く共感するところがあり同番組内では満点をつけたほどの絶賛ぶり。

井筒「みなさん知らないと思うけど、映画人はみんなキ●ガイですよ!!企画された映画をやめる、という決断をするのは監督にとっては大変な決断です。というかみんな絶対に止めようとしませんからね。テリ—・ギリアムだって散々な目にあってるのにあのオッサン最後“またやったる!”って顔してたのわかるでしょ!?みんなどんな辛い目にあってもそうなんですよ。人間落ちるとこまで落ちたら、そこからが強いんです。僕も製作が頓挫して落ち込んでる時ありましたよ。そういう時誰も助けてくれないもんなんです。今まで親友やと思っていた奴にも知らん振りされたりしましたよ。でも、ずっと僕の助監督やってた映画監督の阪本順治と漫才師の島田紳助が手紙くれたんです。これにはものすごい励まされましたね。二人には感謝してます。これは最初映画のメイキングとして宣伝用に回していたんだと思うけど、それが実際にこんな風に一本の映画として上映されてしまうなんて、テリー・ギリアムそうとう恥ずかしいんとちゃうかな?」

☆『ロスト・イン・ラマンチャ』は渋谷シネ・アミューズにて公開中!!

◇作品紹介『ロスト・イン・ラマンチャ』

(綿野かおり)