アジア発エンターテイメントの真打ち『HERO』!主演のマギー・チャン、衣装デザイナーワダエミ来日記者会見
第75回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネート、第53回ベルリン国際映画祭では特別賞を受賞。本国である中国では中国映画史上最高の興行収入を達成しただけでなく、観客動員数ではすでに公開されている台湾、韓国、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイなどでも、軒並み第1位となり大ヒットを記録している。『あの子を探して』『紅いコーリャン』『初恋の来た道』のチャン・イーモウ監督は、すでに世界的な巨匠だが、これまで作ってきた作品はすべて中国国内向けだった。この『HERO』こそが、彼が世界に向けて作った初めての作品である。アジアの粋を集めた記念碑的エンターテイメントであり、キャスト、スタッフともにこれ以上ないほどの夢の顔合わせで製作されている。SARSの脅威にも負けずに来日した主演のマギー・チャンと衣装デザイナーのワダエミが、揃って会見を行った。
—激しいアクションシーンが多いですが怪我などは大丈夫でしたか?
マギー「私はアクションは専門ではなく、むしろ苦手な分野です。ですがチャン・イーモウ監督とご一緒できるのであればどんな映画でも出演しようと思ってました。現場では他の出演者のみなさんも大した怪我もなくかすり傷程度でした。私が一番楽しませていただいたのは、ワイヤー釣りです。ご覧になったら分かると思いますが、私がチャン・ツィーと森の中で戦うシーンで、私は飛んで飛んですごく楽しかったです。剣さばきだとか立ち回りの場面はすごく苦手であまり好きではありませんでした。でも他の出演者のサポートがあったのでここまでがんばれたと思います。」
—この映画は5色のシンボリックな色が基調となっていますが、ワダさんが衣装をデザインするにあたって、監督のチャン・イーモウさんからはどのような指示があったんですか?
ワダ「監督と2年前にお会いしたときは、4人の刺客の衣装をつくってほしいという話だったのですが最終的には1,000着以上もの衣装を担当することになってしまいました。チャン・イーモウ監督のやり方というものは非常に流動的でどんどん変わっていきます。最初の台本では3つの話があってそれは結構リアルな衣装でやるという風になってました。それで私はこの話は、黒沢明監督の『羅生門』に似ていると思いまして、監督に3つに色を分けることを提案しました。三色をどういう色にするかというところで、彼は赤と白と黄色とおっしゃいました、しかし私は黄色というのは中国の土の色に似ているので不利だと思い、赤と青と白を主体にすることを提案しました。そして赤の中でもどの赤を使うかということを、私が50色くらい染めたものを用意してその中からチャン監督が決めました。チャン監督というのは台本で全て決めてしまうのではなく、ライブでその場でアイデアを作り上げていくんです。ですから最後までどういう映画になるのかは、出来上がるまで私にもわかりませんでした。」
—マギーさんはチャン・イーモウ監督の演出に大変感銘をうけたそうですが、マギーさんご自身が今後監督や製作にまわってお仕事されるなんてことは?
マギー「舞台裏のスタッフは以前は考えたことがあります。監督するということは今の仕事の延長線上にあるので可能性はあります。けれどプロデューサーには興味がないです。理由は私はお金の管理がまったくできないですから、きっと映画がめちゃくちゃになってしまいます(笑)。監督にはすごく面白い面がある仕事だと思います。しかしここ数年は編集の仕事にも興味があります。編集のやり方ひとつでまったく別の映画になる可能性もあるからです。しかし、当面は役者に専念していこうと思っています。」
—古代のようであって現代のようでもあるワダさんの衣装はすばらしいですね。どういうアイデアでデザインをされたんですか?
ワダ「今回の映画はアクション映画で風を非常に感じました。衣装全体のデザインは古代の日本、中国、韓国をミックスして、カッティングはダンスコスチュームを参考にしました。衣装の風に翻り具合などにこだわりました。その辺はマギーや出演者の方たちは非常に上手に表現してくれたと思います。それぞれの衣装の重み、軽さで個性を表現することに挑戦しました。」
—5色を基調となっていますが、マギーさんが演じた飛雪も各色ごとにどんな風に演じ分けされてますか?
マギー「実はこの脚本を受けとって私なりに役作りを研究しました。もちろん途中で監督とも相談しました。赤の部分は女性がもつ嫉妬、うらみ、愛、情熱です。飛雪のもっている邪悪な部分をだしました。青の部分はロマンスを語る部分で、飛雪と残剣が共通の目的のために命を落とすという、非常に純粋で女性らしい飛雪を表現しました。白は飛雪の本当の姿をあらわしている部分です。愛する人を殺してしまった哀しさ、空しさです。私自身も一番共感した部分です。」
『HERO』は、2003年夏、丸の内ルーブル系にてロードショー公開
(綿野かおり)