「今度が四本目。今までで一番達成感があります」。豊田利晃監督は「ナイン・ソウルズ」の完成披露試写でこう挨拶した。偶然に牢屋の穴を見つけ、脱獄を計った9人の男たち。ある者は親殺し、またある者は子殺し、またまたある者は同級生9人殺し、そのほか暴走族仲間4人殺し、間男殺し、自殺ほう助、爆弾魔・・・揃いも揃った極悪犯罪者たちだが、本作はそれでも笑える、それでも切ない、シャバの青春物語なのだ。4月18日、銀座・ガスホールで行われた試写会では豊田監督と、子殺し犯人にして囚人たちのリーダー格を演じた原田芳雄、親殺しでひきこもりの犯罪者未散役、松田龍平が駆けつけた。
 「サディストなんで豊田監督には気をつけた方がいいって、撮影前にこう言われたんです(笑)」、豊田作品初出演の原田芳雄は監督の感想を聞かれ、こう答える。で、実際は?実際のところ、豊田監督はサドだったのか!?「そりゃもう。こういっちゃなんですけど、ええ、ええ、ひどいもんですよ、もう」、隣で監督は苦笑、原田はさらに続け、「見てもらえればわかりますけど、この年でね、富士さんの5号目を走ることになるとは思いませんでしたよ(笑)」。その甲斐あってか、どうなのか、またも存在感ある演技を見せてくれるわけだが。
  一方、松田龍平はひきこもり、暗い若者役。原田演じる虎吉に最初は敵対心を持ちながらも、段々と親子めいた(ともに親殺し、子殺し犯罪者というのは豊田監督らしい毒だが)感情を抱くようになる。「僕も結構、ひきこもりなんです。いつも家にいるような感じで・・・」。舞台挨拶時にはすっかり伸びていた髪だが、劇中では限りなく坊主に近かった。「断髪式の時は、なんだかほんとに悪いことしてるみたいな気分になった」と言う。
  ちなみに松田龍平は「青い春」に続く2度目の豊田作品になる。本作では脱獄囚9人に千原浩史、マメ山田、鬼丸など豊田作品に馴染みの面々が登場するほか、伊東美咲、京野ことみ、鈴木杏、松たか子など女優陣も豪華。豊田監督初期の集大作となった「ナイン・ソウルズ」、公開は7月の予定だ。