台湾ニュ−ウェーブの一人としてポスト侯孝賢と呼ばれている台湾映画屈指の逸材、チェン・クフォー。その彼の新作は、東洋的な要素をふんだんに盛り込んだ東洋的な感性でみせるホラー映画『ダブル・ビジョン』。台北の街を震撼させた残忍な連続殺人事件。被害者の脳内に幻覚を見せる黒い菌状の物質が発見される。捜査は進展せず、台湾警察はFBIに助けを求め、エリート捜査官ケビン・リクタ−が送り込まれる。台湾警察の切れ者ファン・フォツーとコンビを組み捜査を始めたリクタ−は、ある衝撃的な事実に気づく・・・。台湾、香港、アメリカの才能を結集し、最先端IT技術と妖しい民間信仰が共存する都市・台北を舞台に史上最凶の犯罪をめぐるスリラー映画が誕生した。肺炎SARSが懸念され香港よりの出入国の規制が厳しい中、そのチェン・クフォー監督が来日した。

−−−この作品は今までのホラー映画と違っていて新しいタイプのものになっていると思うんですが、監督はどういったきっかけでこの映画を撮ろうと思ったんですか?
「スリラー映画というのは非常に特別な映画体験ができるジャンルだと思うんです。例えばコメディだったら、隣の人や他の人間とそのギャグについて笑いあったりできますが、スリラーは現実ではほとんど体験できないような出来事が描かれているわけです。そうすると、私の中ではもう”映画 イコール スリラー”なんです。イコールをつけてもいいくらいの体験だと思います。ですから、私は映画を撮ることになってからは是非スリラーを撮りたいと思っていました。ただスリラーというのはあたかもアメリカ映画の特許という風になっているので、そうではなく、自分の生きた社会にマッチするものにしたいと思って作りました。」

−−−背景には道教がありますよね。日本ではまったく道教は未知のものなので新鮮な怖さがあると感じましたが、台湾ではどのように道教は考えられているんですか?
「確かに道教は中国人特有の宗教です。これは私達の生活に結びついていて、お経とか神様にお参りに行くとかそういう習慣がたしかにありますが、はたして中国人の多くがそれを理解しているわけではないと思います。ですから道教のもつ神秘的な面を作品に活かして、新しい恐怖を作りたいと思いました。」

★『ダブル・ビジョン』は5月24日よりシネマスクエアとうきゅう他全国ロードショー!!

◇作品紹介『ダブル・ビジョン』

(綿野かおり)