日本人初のアカデミー賞短編アニメーション部門ノミネートの快挙となった『頭山』をはじめ、かわいくもちょっと奇妙で、心地よく後をひき癖になる山村浩二監督の短編アニメーションを一挙に上映する『ヤマムラ・アニメーション図鑑 vol.1』が、4月5日初日を迎えた。当日都内は、冷たい雨が降りしきり冬に戻ったようなあいにくの陽気だったが、会場には幅広い層の観客が多数来場し、多彩なヤマムラ・ワールドを堪能。また、初回・2回の上映前には、アメリカから帰国したばかりの山村監督が舞台挨拶を行った。
 舞台に立った山村監督は、報道陣のフラッシュにちょっと緊張しながら、「今日は冬に逆戻りしたような天気にも関わらず、沢山来ていただいてありがとうございます。『頭山』は去年の6月に完成したのですが、アカデミーのノミネートがあってこの桜の季節に、桜通りに面したユーロスペースで、正式な公開を迎えることができて嬉しく思ってます。」と挨拶。続いて訪米時のエピソードや、授賞式の様子などを報告。また、この後も5月には、ノルウエーのフレドリクスタ・アニメーション・フェスティバルとフィンランドのタフ・アイトゥルク国際アニメーションフェスティバルで、それぞれ回顧上映プログラムが組まれるなど、海外での注目度も高い。作品を制作する上で、国内・海外といった意識はあるのだろうか?
 「もともと国籍とか年齢は意識せず、作ってきたんです。自分自身が好きだった短編作品とかもそうでしたが、台詞が少なくどこの国の人でも、どんな年齢層の人でも楽しめるのが短編アニメーションの魅力だと思うんです。普通のアニメーションのように台詞劇ではないので、小さいお子さんも、御年寄りも、言葉が通じない他の国の人にも理解ができると思うんです。幅広く壁を越えて、自分のやりたいことや価値観を伝えられることが魅力でやってきたものですから、これからもどこの国の人に向けてということは無く、同じように作っていきたいですね」(山村)。実際、言葉ありきともいうべき、古典落語を題材にしながらも、言語を越えた独自の表現でアカデミー賞にノミネートされた『頭山』など、まさにその思いどおりの作品と言えるだろう。現在、川本喜八郎氏の企画のもと、世界各国から35人のアニメーション作家が参加し、松尾芭蕉の連句をアニメ化する『冬の日』にも参加し、こちらは秋頃の公開予定とのことなので、そちらも期待だ。
 なお、『ヤマムラ・アニメーション図鑑 vol.1』は渋谷・ユーロスペースにてロードショー公開中!4月12日(土)は12時の回・14時の回の上映終了後には、山村浩二監督によるティーチインが開催されるので、貴方も監督の創作の秘密に迫れるかも。さらに引き続き5月下旬からは、『ヤマムラ・アニメーション図鑑 vol.2』がモーニング&レイトショー上映が決定。『頭山』はもちろん、NHK「おかあさんといっしょ」で放送された『パクシ』などの作品を加えて一挙上映。またこの上映のための、“おまけアニメーション”もあるとのこと。お見逃し無く!
(宮田晴夫)

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ヤマムラ・アニメーション図鑑