開拓以前のアメリカ西部の大草原を、何ものにも屈することない魂を持った野生馬、スピリット。『きれいな涙 SPIRIT』は、ドリームワークスが『シュレック』に続いて製作した最新長編アニメーションだ。基本的には台詞の無い馬達が見せる細やかな表情が、最小限のナレーション=心の声と楽曲によりさらなる深みが加わり、繊細かつ力強い感情を見る者にわき起す。勿論、娯楽の王道ドリームワークスらしく、クライマックスをはじめ“インディ・ジョーンズ”バリのアクションも満載だ。
 4月1日、オリジナル版と同時公開される本作の日本語吹き替え版ボイス・キャストの発表会見が、ホテル西洋にて開催された。オリジナル版でマット・デイモンが担当した“心の声”は、長編アニメの吹き替え初挑戦となる中村俊介が、ブライアン・アダムスの曲の日本語版は、ZIGGYの森重樹一がそれぞれ担当し、より日本人の琴線に響く世界を聞かせてくれそうだ。

Q.御挨拶をお願いします。
中村俊介(ナレーション)——ナレーションというか、スピリットの心の声を担当させていただきました。素晴らしい作品に参加させてもらえて、光栄に思ってます。公開がすごく楽しみです。宜しくお願いします。
森重樹一(音楽)——僕はバンド活動がメインなので、こういう仕事は滅多に無いのですが、作品の内容も音楽も素晴らしく、僕自身ブライアン・アダムスはすごく好きなアーティストなので、英語を日本語にするという点では物理的に難しい面もあったのですが、自分にとっても実になる仕事をさせてもらったと思っています。

Q.完成した吹替え版を観てのご感想は?
中村——日本の感覚に、すごくぴったりくる感じがしました。英語版を見ててもそうでしたが、日本版になってさらに伝わり易くなったのかなと思います。子供達も多く見ると思いますが、すごく判り易くよくなったとは思います。
森重——こう見えても結構涙もろかったりするので、試写を観ていて最後の方とか目頭を熱くしながら、こういう話が子供達に観てもらえれば、殺伐としたティーンエイジャーが少なくなるかもと思ったし、僕達の世代が観ても感動できる作品だと思いました。

Q.中村さんに、吹替えをするに当っての準備は?
中村——今回は特に他のアニメを観たわけでも無く、準備すると言うよりは、現場の雰囲気でしたね。現場での演出の方の指示等で、全て作り上げていきました。

Q.森重さんんに、オリジナルの音楽も素晴らしと感じられたとのことですが、日本版を担当するにあたり、意識された点は?
森重——基本的には自分の音楽を作る人間なので、一番それらしいのはオリジナルだと思うんです。僕自身もブライアンの声のファンなので、ただオリジナルっぽく似せてやるのでは意味が無い。オリジナルをスポイルしない形で、いかに自分らしさを出すかということは考えましたし、英語と日本語では物理的に節回しが違うところが多いので、そうした部分は現場で若干符割を直したりしながら、細かいエディットをしてみました。それは楽しかったし、面白かったですね。

Q.森重さんに、この作品のオファーを受けた理由はどのような点からと考えられますか?
森重——声質もあったと思いますね。僕も日本人ではハスキーな声なんですが、ブライアン・アダムスは僕以上にいい意味でハスキーな美声なんです。それとレンジ、キーが洋楽ですので高めですが、最近では若い人でも高い方はいらっしゃいますが、ブライアンとほぼ近い年齢的な部分などもあったのではないかと思います。

Q.昨年の『シュレック』に続く、ドリームワークス作品のボイス・アクターにチャレンジされたわけですが、感想は?
中村——ドリームワークスの仕事に携われるということは、自分の中で信じられなかったし、光栄で嬉しかったです。今回はナレーション…心の声ということなのですが、スタッフの方たちとも気持ちよく仕事が出来て、いい仕事に出会えたなと思いました。

Q.この映画で特に観て欲しいポイントは?またお好きなシーンをお聞かせください。
中村——全篇通してそうなんですけど、馬と人間との友情みたいなのが出てきて、そういうのは面白いなと思いましたね。自分もクワガタを飼ってるんですが、全然判り合えないので羨ましいなと(笑)。
今回はアニメと重なるように心情がメロディとして入ってくるので、音楽が流れ盛り上がる部分が大好きですね。
森重——全篇通し、全部のシーンに意味があると思うのです。あえて一つを切り取れば、クライマックスが感動的なわけですが、そこまでには様々なシーンを経て至っているという意味では、一つをあげるのは難しいです。

Q.中村さんに、俳優とナレーション・声優としての仕事で違いはなんでしょう?
中村——大きな違いは自分が映らないことだと思うんですけど(笑)、その分身体でのアクションが無く、言葉に全てこめなくてはならないのが難しいなと思いました。

 本作は昨年のウィナーとなった『シュレック』に続き、今年の長編アニメーション部門にノミネートされたが、惜しくも受賞は逃してしまった(『千と千尋の神隠し』が受賞)。そのことについて問われた中村は、「どれだけ心に残るかが勝負だと思うし、その点では上だと自分の中では思ってます」と自信をこめてコメント。その成果は、皆さん是非劇場で確認して欲しい。また、森重が担当した音楽も、現時点ではサントラCDの発売が未定とのことなので、ファンの方はお聞き逃しのないように。

なお、『きれいな涙 SPIRIT』は2003年4月19日より日劇3他にて全国ロードショー!
(宮田晴夫)

□作品紹介
きれいな涙 SPIRIT