『髪結いの亭主』『橋の上の娘』のパトリス・ルコント監督の最新作『歓楽通り』。舞台は1945年巴里最後の娼館”オリエンタル・パレス”。そこはシャンペンのしぶき、香水とおしろいのかほり、柔肌にしなやかな光沢を放つシルクの下着をまとった客待ちの女たちの陽気な笑い声に満ちた欲望の館。2月25日に青山スパイラルでおこなわれた試写会では、映画に登場した娼館のイメージを再現する試みで、ゴージャスなコルセットやランジェリーをまとったモデル達がおのおの一つずつ飾り窓でポーズをとる、といったような”映画とファッションの融合”ともいうべきエキシビジョンが催された。試写に訪れた観客たちは、配置された五つの飾り窓でポージングをとる美しいモデルたちを眺めつつ試写会場に辿り着く、というような仕組みになっている。五つの飾り窓のモデルたちは、ロリータ系、ビッチ系、ゴージャス系、ゴス系、ロック系、など皆それぞれ異なる魅力でもって観客にアピールしていた。このエキシヴィジョンの衣装を手掛け、そして本作の衣装デザイナーであるクリスチャン・ガスクがフランスから来日し舞台挨拶を行った。

ガスクーーー「みなさま、こんばんわ。また日本に来れたこと、とりわけ東京に来れたことに感激しております。というのは、フランスにおいて日本の文化というものは大変評価されており、私も日本の映画がとても好きだからです。私のはじめての日本映画との出会いは、黒沢明、小津安二郎、溝口健二の映画をパリのシネマテークで観ました。現在では、大島渚、北野武などの日本の映画監督はフランスで大変注目されています。」

と、実はガスク氏は大の日本贔屓であるようだ。
娼婦の衣装であるにもかかわらず、とても品がよく美しい衣装であることについても、そこにもどうやら日本文化の影響があるようだ。

ガスクーーー「レティシア・カスタさんを中心に売春婦の衣装をてがけたわけですが、いつの時代であっても売春婦の衣装というのはモノクロで紋切り型の衣装というのが想定されます。ですが、今回の作品では暖かい光をイメージして黄色みを帯びたような色調を重視しました。黄色というのはわたしの中の無意識で選択した色なのではなくて、のちのちに気が付いたことなんですけれど溝口作品に登場するお姫さまの衣装の中の黄色が自分の中に非常に強く印象に残っていて、それが今回の作品の参考になっていると思います。4、5年前・・・という監督が蝶々夫人オペラを映画化して私が衣装を担当しました。私のなかにはもちろん着物という文化はありませんので19世紀のフランスの衣装と日本の衣装を比較してみましても、まったくそれがどういうものかわかりませんでした。ですから、蝶々夫人の衣装を手掛けたときはまったくゼロからのスタートでした。19世紀に実際に使われていた着物のカッティングのことから始めて、いろいろ勉強しました。本当に素晴らしい民族衣装だと思います。レティシア・カスタさんの衣装はルコント監督の意図を私が汲んで作り上げたものなんですが、あの時代の若い女の人が生活の中できているもの、いかにも娼婦というのではなく、日常に着ていたものを想定しています。レティシアカスタさん演じるヒロインがいかに夢のある存在かということが衣装を通じて表現したかったことです。」

最後にクリスチャン・ガスク氏からこの映画をこれから御覧になる方々へのメッセージです。
ガスクーーー「いくつもの大陸を越えてこうして日本に来れて大変嬉しいです。私を日本に呼ぶことを企画してくれた配給会社の方たちにも感謝したいです。この映画には大変自信と誇りをもっています。この作品は多くの人々が待ち焦がれて、探している、そういう愛の物語であると思います。どうもありがとうございました。」

☆「歓楽通り」は3/1(土)より渋谷シネマライズ、川崎チネチッタにて官能のロードショー公開!

(綿野かおり)

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