SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザオープニングイベント、〜デジタルシネマの夜明けⅡ〜『LASTSCENE』上映&トークイベント開催! 『リング』でおなじみ、中田監督&一瀬プロデューサーによる製作秘話公開!!
前回の「JamFilms」上映&監督陣によるトークイベントも好評だった、SKIPシティのオープニングイベントの第2弾、「デジタルシネマの夜明けⅡ」が8日、同じく彩の国ビジュアルプラザにて行われた。
今回は『リング』で一躍名を馳せた、中田秀夫監督の最新作『LASTSCENE』のDLP上映(フィルムを使用しない上映)と、中田監督&現在公開中の『呪怨』のプロデューサーも務めている、一瀬隆重プロデューサーによるトークイベントである。妻の死をきっかけに酒におぼれスクリーンから消えていった、日本映画黄金期の大スターと、映画に希望と夢を持って働く、若く純粋な女性スタッフという、二人の世代を超えた束の間の交流を通して受け継がれる、映画そのものへの熱い想いを軸とした、切なくも心温まる人間ドラマ。それが、『LASTSCENE』である。
「人生という一幕は、名画以上の物語を紡ぎだす。」というキャッチコピーそのままに、映画の中の物語以上にドラマティックな人と人との絆と交流が日本映画の変遷を背景に豊かに描かれている。さりげなく、しかしほんのりと心に残るラストシーンは必見。ホラーシネマの監督、という印象が強い中田監督だが本作はそんなイメージを払拭するかのような、情感豊かなヒューマンドラマに仕上がっている。
以下、終始和やかな雰囲気の中行われたトークイベントの模様をどうぞ。
Q:「この映画を作ろうと思ったきっかけは?」
中田監督:「最終的に『LASTSCENE』のプロデューサーになった、マシュ-ジェィコブス氏から、韓国のとある会社が僕に、内容は自由で、デジタルビデオを使った劇映画を撮ってほしいと言っている、と言われまして。ホラーじゃなくても良いので、複数の企画を出してくれと言われたんです。それで最初、ハローワークを舞台にした、日本の失業問題を扱ったフェィクドキュメンタリーを撮ろうと思ったんですが、それは(韓国で)身につまされる問題だからやめてくれと言われまして(笑)で結局、一瀬さんがそのとき持っていた原案が後の『LASTSCENE』となったんです。」
Q:「原案を出された一瀬プロデューサーは、いつ頃からこの映画をやってみたいと思われていたんですか?」
一瀬プロデューサー:「いつも映画化したいストーリーというのは、自分なりにメモ帳にアイデアを20か30位は書きとめているんですが、この作品は、ある年をとった方が亡くなられる日に何を思うかということを映画にしたい、という思いがずっとあったんです。この映画を見て、テレビを非常に馬鹿にしている、と言われ方もしたりするんですがそういう気はあまりないですね。現状をありのままに描いているつもりなので(笑)」
Q:「この映画に込められたテーマや見所というのは?」
中田監督:「今の日本映画のスタッフに、過去の映画人のスピリットが受け継がれて行くということと、壊れた夫婦の関係が最後に修復するという、ある種重いテーマを、後半30分くらいで扱っているので、テクニックとして冒頭に現代の撮影をとても軽く描くという作戦に出たんです。ストーリーの中盤で、小道具係の麻生久美子さんが『くだらないかどうか決めるのはお客さんに決めてもらえば良いんじゃないの?』とさらっと、でも真剣に言うシーンが僕としては最も重要な点で。どんなスタッフでも、映画作りの一部でしかなくて、映画全体の為に皆、貢献しているのであって、映画全体はお客さんに見てもらって面白い、面白くないの判断を決めてもらえばいいんだ、ということは込めたかったですね。」
Q:「これから映像製作に関わろうとしている、若い世代の方たちへのメッセージをお願いします。」
中田監督:「デジタル技術を拒否することはもはや出来ないですが、あくまでもデジタル技術は、人間が映画を見て感動するための補助手段というか、後ろから上手く支えてくれる黒子として使ってほしいですね。というのは、人間の目と耳はどこまでいっても、アナログな器官でその二つの器官で映画を楽しむわけですから。デジタル技術が良い映画を保証してくれることはないので、縁の下の力持ち的な存在として、上手くデジタル技術を取り入れていってほしいですね。」
この他にも、評論家の意見を気にしすぎて、作家がなかなか狭いフィールドから抜け出せないような状態にある、日本映画の現状についての話やデジタルシネマの良し悪しについてなど、映画全体に関する内容の濃い、興味深い話が飛び出したが、監督・プロデューサー共々一番大切にしているという、「映画の良し悪しは、お客さんに決めてもらうべきであって、お客さんに満足してもらえるような映画をつくること」というストレートな発言が非常に印象的であった。(原由夏)
□公式頁『LASTSCENE』
□公式頁「SKIPシティ」