中年サラリーマンが定年前に起こした事故をきっかけに崩壊寸前となった家族。ばらばらになりかけた家族の再生や夫婦のあり方といった普遍的なテーマを、一風変わったストーリーで描き出す『ミラーを拭く男』が無事撮影を終了した。

 本作は、その脚本がサンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞日本部門受賞作品に選ばれ、みごと映画制作権・NHKでの国内放送権を獲得した。過去において、同賞を受賞した作品には『セントラル・ステーション』(ベルリン映画祭グランプリ)、『彼女をみればわかること』(カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ獲得)などがあり、今後出品される国内外の映画祭での動向も気になる注目作だ。
 
 撮影は、2人しかいない撮影隊が日本中を飛び回り、北海道、仙台、長野での大きなロケに加え、沖縄、宮崎、富山、松本など日本各地でロケが行われた。その結果、作品全編に渡って日本の四季折々の風景がつむぎだされる風土豊かな情景が見所となった。また、各ロケ地でのボランティア隊には60歳以上のシルバー層のおじいちゃん・おばあちゃんが多数参加しており、作品により暖かみを加えている。
 
 定年直前の中年サラリーマンを緒方拳、その妻を12年ぶりにスクリーンに登場する栗原小巻、娘に映画初出演、「ちゅらさん2」の続投も決まった国中涼子、息子をDAPUMPのISSAが演じる。
「丁度去年の今ごろ、サンダンスでの授賞式でした。それから考えると、なんだか信じられない気分ですね。」本作が長編映画初監督となる梶田征則監督は、カーブミラーという普段気にもとめないような題材に焦点を当てたこの異色作で恵まれたデビューを飾ることとなった。

緒方拳さん(父・皆川勤役)——「何を話すわけでもなくただミラーを拭く、とんでもないアクション映画だよね。セリフがないのがおもしろかった。“カーブミラー”という目のつけどころが監督の才能だね。」

栗原小巻さん(母・皆川紀子役)——「社会が不安に包まれているなかで家族一人一人が困難を乗り越えていくのが難しい時代です。そのような中で夫(緒方拳)が鏡の中に見たのは、「愛」だったのではないでしょうか。」

辺土名一茶さん(息子・芳郎役)——「タイトルを聞いたらサスペンス?って思いましたけど。家族のふれあいや父の存在の大きさなど、考えさせられる作品です。」

国中涼子さん(娘・真由美役)——「映画初出演でしたのでドラマと比べてしまいますが、ワンカットワンカットを丁寧に撮るスタイルに慣れず、何回もテスト等をするので緊張してしまいました。ですがそれも勉強です。心に残る作品になりました。」

津川雅彦さん——「変な映画です。孤独な男のわがままな戦いの映画。ぶっきらぼうな主人公がとてもよくって「これこそ男だ!」と、最後に異常な愛情を感じたね。」

キャストは他に、大滝秀治、岸部一徳、水野久美、山本圭など味のあるベテラン勢が脇を固める。そんな現場は、「大滝さんがとても素敵でした」(緒方)「長門裕之が声だけの出演をしてるんです。変でしょ?」(津川)といったように、和気あいあいとした雰囲気だったことがうかがえる。

なお、『ミラーを拭く男』は日本各地で行われたロケ地へのお礼を兼ね、長野での先々行公開、先行公開に続いて全国横断試写会を行った後、2003年9月テアトル系全国ロードショー予定! 

(Yuko Ozawa)

◆ 『ミラーを拭く男』