フランスに実在した殺人犯ロベルト・スッコは、19才のとき実の両親を殺害し逃走。わかっているだけで7件の無差別殺人、さらに件数不明の強盗・誘拐をくりかえした筋金入りのサイコキラ−である。その暴走は26才のとき、逮捕され独房で突然の自殺をしたことにより、いまだに解明されていない謎の多い人物である。一説によると、彼の破綻した人格には幼い頃に受けた虐待が大きく影響しているといわれている。

1月25日渋谷シアター・イメージ・フォーラムにおいて初日公開された、この<理由なき殺人者>第1号ロベルト・スッコを映画化した『ロベルト・スッコ』のトークイベントに招かれたゲストは、”幼児・児童虐待防止”をテーマにしたHIP-HOPチャリティーアルバム「CHANGE THE GAME」の参加アーティスト、K-DUB SHINE氏、DJ OASIS氏、童子-T氏。昨年再結成されたキングギドラのメンバーである。そして司会には、援助交際から少年犯罪まで幅広く研究されてる社会学者の宮台真司氏が招かれた。『ロベルト・スッコ』の深層にみられる”幼児虐待”という共通する社会問題について、彼らが熱く語った。

トークでは、スッコの理由なき暴走をただ「理解できない、完全な異常者」として一蹴するのではなく、彼の凶器のような存在がどのようにして生まれたのかを考えてみるべきだと話しがでた。観客ひとりひとりが覚醒し、いい悪いはひとまず別として、殺人者ではなく殺人者を生み出してしまった環境や社会について考えなければならないと主張した。それは監督のセドリック・カーンの製作意図にも反映されている。スッコはメディアによって「血に飢えたモンスター」または「アナーキスト」というレッテルを貼られたが、カーン監督は彼の心理にチープな説明を加えず、劇的にするための脚色も一切拒否し、精神分裂症の疑いがあった彼が実際にとった行動だけを徹底して追うことで、彼本人の中では正常な状態である<渾沌>を映像として捉えることを成功させた。そしてあえて最大の謎「スッコはなぜ殺人を犯すのか?」に対する答えを用意しなかった。作品をみた観客ひとりひとりにその謎が向けられることになるのである。映画館でまさに、ありのままの殺人者スッコを凝視せよ・・・

『ロベルト・スッコ』は1/25より渋谷シアター・イメージ・フォーラムにて衝撃の映像体験、ついに解禁!
(綿野かおり)

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『ロベルト・スッコ』