『ガッジョ・ディーロ』、『ベンゴ』等、自らのルーツでもある失われつつあるロマ(ジプシー)文化を描きつづけるトニーガトリフ監督の最新作は、ひと夏の小さな恋の物語、『僕のスウィング』。

その各作品で印象に残るのが気分を高揚させ陽気な世界に連れて行ってくれるような不思議な力を持って響くジプシー音楽である。『ガッジョ・ディーロ』ではルーマニア・バルカン音楽、『ベンゴ』ではアンダルシア・フラメンコを、そして今最新作ではジプシー音楽とスウィング・ジャズが融合された“マヌーシュ・スウィング”を響かせる。

 世界的に有名なジャズ・ギタリストのジャンゴ・ラインハルトが生みの親であるマヌーシュ・スウィング。01年公開のウディ・アレン監督『ギター弾きの恋』で、ショーン・ペンが演じた天才的ジプシー・ギタリストは彼がモデルとなっていたことが記憶に新しい。劇中、少年にジプシー・ギターを教える重要な役で出演したチャボロ・シュミットはジャンゴ・ラインハルトの第一後継者にあたる。その神業的なギターさばきは監督をもって、「この音楽を世界中に広めたい!」といわしめたほど。

 シネマライズでの先行レイトショー上映において、来日中のトニー・ガトリフ監督の舞台挨拶とともに、チャボロ・シュミット、同じく映画にも出演したマンディーノ・ラインハルトと彼のバンドによって、そんなハートと耳で聴く軽やかなジャズ、マヌーシュ・スウィングのライブが行われた。

トニー・ガトリフ監督——私は何度もこちらに伺っていますが毎回楽しみにしています。そして毎回熱いもの、熱いまなざし(笑)を感じます。今年はミュージシャン達とここへ戻ってきました。彼らは友人であり家族であります。

マンディーノさん(ギター・マンディーノ役)——『僕のスウィング』のおかげでここに来ることができました。監督は映画が得意で、朴達は音楽が得意です。でもとても気が合うんです。監督にも1曲ここで歌って欲しいな。

チャボロ・シュミットさん(ギター・ミラルド役)——マヌーシュの人々は今も放浪している人たちもいるんです。私たちは音楽のおかげでこうして旅をすることができます。みなさんにあえて本当にうれしいです。この演奏を聞いてみなさんがいいな、と思ってくれればまた戻って来る事ができます。

バンドの奏でる軽やかにスウィングに、客席からはどこからともなく手拍子が。ロマ民族が今も奏でるその暖かな音楽は映画と同じく、会場はもとより聴いているわたしたち一人一人の心を陽気さや楽しさで包み込んでいたように感じた。

なお、『僕のスウィング』は2003年1月18日より渋谷シネマライズにてロードショー!

(Yuko Ozawa)

『僕のスウィング』