第3回東京フィルメックスも最後の上映を向かえた。ラストを飾るのは、『素敵な歌と船は行く』でも今作の主題である日常生活を抜け出した気ままな旅に出る主人公を描いたオタール・イオセリアーニ監督の『月曜日に乾杯!』である。誰もが週末を名残を残しながらよいしょとまた退屈な日常に帰る月曜日。同じくそんな倦怠感を感じていた中年男のヴェニスでの行き当たりばったりの旅路、そこで出会う奇妙な人々との出会いをユーモアたっぷりに綴る。全編を通じて展開される幸福なイオセリアーニワールド。上映後、オタール・イオセリアーニ監督が至福のティーチ・インを行った。以下、読むと幸せな気分になります。

オタール・イオセリアーニ監督——日本はますます洗練されたお金に豊かな国になったと思います。私はゲオルギアから来ました。とても小さな国ですがとても古い国です。何世紀もの紆余曲折を経て、ゲオルギアの文化を固持することに成功しました。私と同じような考え方を持った皆さん、私は皆さんに語りかけるためにこの映画を作りました。
人生はたとえ不幸であっても楽しい明るいところもある。この地上で生きることはいつも愉快なことです。人生は難しければ難しいほど人生は楽しいものになります。なぜなら自分が生きている、とより良く感じることが出来るからです。苦しむこと・そして私たちの周囲にある全ての生涯に対して戦うこと、それが私たちの運命なのです。このようにして連帯や友情を見つけることが出来ます。このようにして尊敬すべき人々に出会うことが出来ます。このようにして尊敬に値しない人が誰なのかも分かります。

Q:主人公に寅さん的なものを感じました。監督にとって旅とは・・?
イオセリアーニ監督 ——旅は地球の表面を移動すること。そして今いるところよりも良いもの、何か違うものを求めるという希望の中で行われるものです。(寅さんに関する言及を受けて、)世界いたるところで同じような考えがあることが分かって誇らしく思います。しかしここで問題になっているのは旅の問題ではなく、この映画はコメディ映画です。全てのコメディがそうであるように悲しいコメディです。しかし全てのコメディがそうであるように楽しい映画です。
 
Q:旅の目的地、ヴェニスについて。
イオセリアーニ監督 ——世界で一番美しい土地のひとつです。ですが、私が初めてヴェニスに行ったとき、このヴェニスにまったく不幸がないことは不可能だと思いました。そしてこの美しい町でも皆さんや私たちと同じように、苦しんで、倦怠を感じている人たちがいるはずなのです。そしてその人々は、歌を歌うこともできるし自分たちの娯楽で楽しむこともできるのです。けれどもヴェニスでも月曜日の朝になると月曜日の朝には単調な日常生活の繰り返しが訪れます。

 「人生はいつも愉快なものであり、人生は難しいほど豊かになる。」温和な語り口のイオセリアーニ監督の哲学的要素いっぱいの人生論に、上映後大勢残った観客たちは聞き入った。その内容は、まるで映画さながらの人生のエッセンスとユーモアを詰め込んだ幸福なひとときであった。

『月曜日に乾杯!』は来年夏、日比谷シャンテにてロードショー公開。

(Yuko Ozawa)

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