松田美智子著による実話に基づく『女子高生誘拐飼育事件』を原作にしながらも、特に2作目以降は必ずしも原作にとらわれず、自由に誘拐した男と監禁された少女との愛憎を描いて好評の『完全なる飼育』シリーズの第3弾が待望の初日を迎えた。今回はそのサブ・タイトルにあるように香港に舞台を遷し、修学旅行で香港を訪れた孤独な少女と、彼女を誘拐・監禁した現地人のタクシー運転手との関係性を、郷愁を誘う香港の田園風景と音楽の中で描いていく。12月7日、銀座シネパトスでの初回上映後、映画初主演でヒロイン愛を演じた伊藤かなと、日本語も実に達者な監督のサム・レオンが来場し舞台挨拶が行われた。
 体当たりの演技でヒロインを演じた伊藤は、香港は二度目。サム監督及びスタッフの多くは日本人との仕事も多く、日本のことを理解してる方が多かったそうだが、それでも広東語のレッスンを積んだとのこと。「判りやすくてよかった現場なんですが、本番中は広東語ですからね」(伊藤)。伊藤の第1印象は「はっきり言って、未だ子供」と言うサム監督。だが、映画のことも未だ何も判らず香港入りした伊藤の緊張振りも、「映画の彼女は同い年の高校生役なので、演技を強調するよりも自然なまま素顔を出せばいいと思いました」と、その素顔の演技には満足気。「撮影中は毎日泣いて、逃亡してました(笑)。演技するのも、人前でするのも初めてだったので緊張し、出来ない自分に苛立ってました」と、素直に撮影現場を振り返る伊藤に対し、サム監督は「それはいいことだと思いますね。自分に対する要求が高いということだから、それが判った方がいいんです。泣きたければ泣かせて、その後戻るわけですから、プレッシャーもなくなるんです」とその資質をお気に召した様子だ。
 シリーズ3作目となる今作は、キャラクターの台詞が少なく表情で見せていく。「これまでのシリーズとは形を変えたいと自分自身思っていたので、なるべく説明部分を減らしてヴィジュアル的に撮りたいと思ったんです。台詞があるところも、稿を重ねるに連れ台詞を減らし表情や身振りで表現することにしたんです」(サム監督)。
 最後に二人は観客及び作品の製作元への感謝と共に、「僕も未だ経験が浅いので、これからもっと面白い作品を撮りたいと思ってますから、応援してください」(サム監督)、「この作品で多くのことを学びました。撮影中、スタッフの方々に迷惑をかけた部分もありましたが、悔し涙をバネにして、頑張りますので宜しくお願いします」(伊藤)とそれぞれ挨拶し、舞台挨拶をしめた。
 なお、『完全なる飼育〜香港情夜〜』は銀座シネパトス、新宿ジョイシネマ3にて20日までロードショー公開中!また両劇場では最多入場者3名に、伊藤かなが劇中で着用の“飼育服”他がプレゼントされるリピーターキャンペーンを開催中。また、12月13日18時から銀座シネパトスにて“飼育女優”対談と題して伊藤かな&深海理絵(『完全なる飼育〜愛の40日』ヒロイン)をゲストに迎えてのトーク・イベントも開催される。
(宮田晴夫)

□作品紹介
完全なる飼育〜香港情夜〜