自身の刑務所体験を漫画に興し、現在も版を重ねるという大人気コミック『刑務所の中』が、映画化された。メガホンを取ったのは、『月はどっちに出ている』、『犬、走る。 DOG RACE』などで知られる崔洋一。監督自身、紀伊国屋で原作を見つけた2時間後には出版社に映画化権を申し込んだという大の原作ファンという。主演を努めるのは山崎努。脇を固めるのはどれも演技派で知られる田口トモロヲ・松重豊・香川照之・村松利史。また大杉漣・斎藤歩・椎名桔平・窪塚洋介も参加。日本俳優界の新旧が終結したこの充実振りだ。
 その中から、崔洋一監督・山崎努・田口トモロヲ・村松利史・松重豊舞台挨拶に立った。

崔洋一監督——ああだこうだというよりまず楽しんで観てください。今ややこしいことや背筋が寒くなることがたくさんありますけど、僕なりに退屈で静かな日々を淡々と描くとどうなるかということを考えながら作りました。原作が大変面白くて紀伊国屋で花輪和一さんの『刑務所の中』を見つけて2時間後には出版社のほうに「映画化権を俺にくれ!」と申し入れにいきました思い立って半年後にクランクインしていましたので、僕のある“熱”みたいなものが逆説的に“静かな映画”を生み出したのではないかと思います。

山崎努さん(主演・ハナワ役)——映画は観て下さる方がいてくれて始めて映画になるんです。試写会の挨拶も出ましたし取材もしました。これは僕が自分自身お勧めできる映画なんです。

田口トモロヲさん(田辺役)——原作の大ファンです。映画化に自分が参加できることはそれだけでカナリ嬉しいです。「癒し系の刑務所もの」になってますので、続編ができるくらいの感じで宣伝してください!世界で始めての?ささやかで暖かい映画です。

松重豊さん(小屋役)——いかつい題名なんですけど気楽な気持ちでふらっと観にきてもらえれば期待に添えるんじゃないかと思います。

村松利史さん(竹伏役)——監督は非常にやさしい方で(笑)ワンカット、ワンシーン終わるごとに「村松、村松、」と誰を呼ぶより大きな声で呼んでいただいて..服役者の役なんですが役作りを超えて服役しているような感じでした。楽しい現場でした。

Q:撮影どうでしたか?
崔監督——刑務所の中っていうと、非常にヘビーなシーンを連想しますよね。ものすごく男たちだけの世界って言う雰囲気になると思うのですが、そういうことはなかったです。撮影中は、もうあとは体を重ねるだけ、というくらい友情と愛情に満ちたようなこともありました。そう言う意味で僕自身とっても楽しめました。

Q:食事「クサい飯」はどうでしたか?
崔監督——ほんとにうまかったです。スローフードのひとつの原点なのではないかというくらい。時として季節折々の品が出たり失った季節感があります。あんまり勧めちゃいけませんけど。
田口——映画の現場っていろいろあって今回は地元の方々が食事を用意してくださったのですがほんと栄養があっておいしくてカットがかかってもみんな箸を置けない、止められないという状態で食べ続けてましたね。

Q:若い共演者や崔洋一監督との仕事をして、何か感じたことは?
山崎——この映画は起承転結のあるストーリーがあるのではなくて、ちょっとしたディテールが芽を出して伸びて来たりというようないろんなものが散らばってる。今日は何が起こるのか?と毎日とても楽しかったです。共演者も始めての方ばかりでとても楽しかったです。

 舞台挨拶中、監督や出演者の口から何度も出た「楽しかった」の感想。一見、「男くさくいかつい?」と思われる撮影現場は、ほのぼのと暖かく、獄中さながらの男の友情も芽生えた様子!?
刑務所内の「クサい飯」や驚くべき規則などの「獄中リアルライフ」に加え、原作を引き継いだ個性豊かな囚人たちのディテールにあふれた描写を、映画ならではの味わいで魅きたてた。
(Yuko Ozawa)

『刑務所の中』は、渋谷シネクイントにて公開、全国順次ロードショー!

『刑務所の中』