特別招待作品『幽霊人間』は、コンペティション審査員をつとめるアン・ホイ監督によるゴースト・ストーリー。アン・ホイ監督がホラー?監督第2作の『The Spooky Bunch』はホラー・コメディだったとのことだが、日本で公開された監督の諸作からは、ちょっと想像しづらかったりして。12月5日の上映後、ティーチ・インに登場した監督、まずは本作の製作背景を語った。映画学校で教えていた監督は、若い生徒達との会話から、香港の観客が映画館に行かなくなっていることを実感し、ゴースト・ストーリーならば観客を映画館に引き戻せるのではないかと思ったとのこと。また、低予算で製作されることが多いホラー映画だが、通常の予算をかけることで品質的にも高いものを目指そうと思ったそうだ。「香港での劇場公開時には、観客動員もよく目標は達せられましたね」(アン・ホイ監督)。

Q.監督が多感でいらした頃に作られた、ショーブラザース、キャセイ等の影響はありますか?また1990年に第二の故郷で実体験に基づく映画を撮られてますが、特別な感情はありましたか?
——確かに私はカンフー映画が大好きでして、ショーブラザースの大河歴史ドラマが大好きです。ただ、自分ではキン・フー監督のように、アクションを撮る才能は無いと思っています。
それと90年の『客途秋恨 』は、とてもいい経験でしたね。今でも別府の観光協会には、感謝しております。

Q.これまで様々な社会問題を取りあげられてますが、これから撮りたい問題は何でしょう?
——社会問題と言うより、現在の香港に住んでいる女性の映画を撮りたいと思ってまして、現在女性のライターと準備中です。

Q.映画館に観客を戻すためにホラーを撮ったとのことですが、現在香港でもホラーが流行っている理由はなんでしょう。香港映画界が不況のため元気がないと思いますが、それ打破するために監督が考えれていることはありますか?
——今香港は社会的にも政治的にも様々な問題を抱え混乱した状況にあります。市民の多くも感情を混乱させていますので、その混乱した現状に対して確固たる意見を言えないような状況だと思います。その結果、作り手達は効果のはっきりした作品に向かっている傾向があると思います。例えばコメディ、泣かせる話し、そしてホラーと言ったジャンル作品ですね。産業的に求められていると言いましたが、個人的にもホラー映画は大好きで、スタッフ一同楽しみながら作りました。
香港の映画状況ですが、経済だけが問題なのではないと思います。私も含めた上の世代の者たちに、何かクリエイティブな感性が欠落しているような気がします。そして若い監督たちが、参入するような余地が無いように思います。

Q.香港は世界的に見ても、女性監督が活躍されていると思いますが、それはどのような背景によると思いますか?新人の女性監督は育っていますか?また、現在ハリウッドでも香港テイストの作品が多数作られていますが、どう思われますか。
——才能ある女性監督は、たくさん育っていますよ。私の知る限りでも、今月か来月撮影に入る監督が二人います。何故女性が多いかということは、私にもわかりませんね。もしかしたら、男女比等のデータの裏づけをとった方がいいかもしれません。ハリウッド映画についてですが、確かに香港の監督がハリウッドに行き作品を発表することはいいことかもしれません。しかし彼らが香港に戻って来てくれないのが、ちょっと残念ですね。ただ現状、香港の映画産業は経済的に苦しいので、アクション映画のようなビッグ・バジェットの作品を撮る余裕が無いとは思います。

Q.出演していたエディソン・チャン、スー・チーら若手俳優についてお聞かせください。
——エディソンもスー・チーも若手の中でトップレベルの俳優だと思います。特に年齢のわりに知識と、プロフェッショナリズムを持っている点で感心してます。エディソンとは特にいい共同作業ができて、彼は撮影時のスタントも全て自分でこなしました。勿論、また一緒に仕事をしたいと思ってますよ。
(宮田晴夫)

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