すでに海外の映画祭では、監督賞、女優賞を受賞している話題作『オアシス』。
上映後の監督を交えてティーチインが行われた。

−−−この映画の描きたかったことは?
イ・チャンドン監督「私がこの映画で語りたかったことは、意思の疎通です。自分が生きていくな方で他者とどれだけ意思の疎通が図れるか観客のみなさんと考えてみたかったわけです。
意思の疎通をどのようにして人と人とが通い合わせるかを考えたときに、一番美しい形が“愛”ではないかと考えました。この映画の中では愛し合う二人に心の通い合いがあるのですが、それ以外の人たちとは意思の疎通が図られていませんでした。強姦罪で逮捕されてしまった彼は、映画のシーンに出ていない部分で弁解していたのかもしれませんが、きっと彼の弁解は、他の人には受け入れてもらえないかもしれません。」

−−−女優ムン・ソリさんの起用のきっかけは?
イ・チャンドン監督「彼女とは、前作の『ペパーミント・キャンディー』にも出演してもらっていますが、そのときは公開オーディションがありまして、そのときに彼女が出演するきっかけになりました。前作で彼女の演技者としての限界能力は知っていましたが、この作品では彼女ではなくても、この役は誰がやっても難しいのではないか、もしかして不可能な役なのかもしれないと思いました。この役は重度の脳性麻痺の体を表現するということは創造以上に難しく、精神的な面で心理的な面をどのように表現するのかという部分が一番難しく、ムン・ソリさんも役者という以前に女性であり、あのような演技をすることには本能的に恐怖心を覚えたのではないかと思います。しかし、彼女は想像を超えた演技をしてくれました。監督としては、彼女に出会えたことは嬉しかったです。」

−−−小象が登場していますが、一切には韓国で撮影していないという噂ですが、どのように撮影したのですか?
イ・チャンドン監督「韓国では動物保護条例で象を扱うことができなかったので、実際には、象のいる場所までスタッフが出向き撮影しました。場所はデビッド・リーン監督の『戦場に賭ける橋』が撮影された場所の近くで、スタッフは、『戦場に賭ける橋』はスペクタクルな作品だが、それと比較されるのか嫌なので、ここで撮影したことは黙っていようと約束していたのですが、バレてしまったようですね。撮影現場でアパートのセットを組んであの1シーンのために象を持ち込んで撮影しました。」

『オアシス』は、2003年シネカノンの配給で日本で公開されます。

□作品紹介
『オアシス』