第3回東京フィルメックスの特集上映企画は、“知られざるロシア映画”と題して日本未公開の60年代ソビエト映画2作品の上映だ。12月1日に上映された『夕立ち』は、『私は20歳』が日本でも上映されたマルレン・フツィエフ監督による、モノクロの群像劇。ヒロインが街を行く姿をカメラ追っていく冒頭から、実に御洒落で素敵な作品世界が展開していく。ヌーベルバーグとの関連性で語られることが多いフツィエフ監督だが、本作は言葉や字幕を差し替えてしまえば、フランス映画だと言われても違和感が無さそうなほど、従来のソビエト映画のイメージとは異なる作品だ。
 TOKYO FILMeX 2002のために来日したマルレン・フツィエフ監督だが、来日は『私は20歳』の時に続き今回が二度目。製作当時、ヴェネチア国際映画祭コンペ部門からの招聘を受けながらも、国の許可が下りぬまま不参加、さらに封印されてしまった作品が、晴れて日本でも上映されることに、満ち足りた笑顔で有楽町朝日ホールの舞台に立った。以下、ティーチ・インの一部をお伝えしよう。

Q.監督はヌーベルバーグから影響を受けた方と紹介されていますが、実際はいかがでしょうか?
——勿論ソ連でもヌーベルバーグの作品は知られていましたが、影響を受けたかと言えば、そうではありません。実際どちらもほとんど同時期に作られた作品で、むしろその時代の影響というのが大きいと思います。フランスであれ、ロシアであれ、日本であれ、イタリアであれ、どこの国でもいいのですが、それぞれの違いが有るにせよ、全てが同時に経験していた何かがあるんです。それが作品に影響しているのだと思います。

Q.オープニングで女性が歩いている所を女性が追っていますが、女性が画面に気づきカメラにの方を気にされますが、それはどのような効果を狙ったものでしょうか?
——私たちはこの作品を撮るにあたり、最初から隅から隅まで考えた映画ではなく、たまたまカメラを持って通りに出て、そこにいたある女性に目をつけてカメラで追って行くような感じを出したかったのです。だれか特別な人間を取り上げたということではなくて、どこにでもいる普通の人を撮った印象でドキュメンタリーであるかのように撮れたらいいなと。この作品の前の作品でも、やはり通りでロケを行いました。気づかれないようにカメラを隠して行いましたが、それでも気づいてしまいカメラの方を見る人が出てきてしまったんです。それを逆に映画の中で使えないかと考え、この作品に繋がったんです。

Q.タルコフスキー監督とは、どのような間柄でしたか?モンタージュ等に類似性が感じられますが。
——タルコフスキーは学生の頃、私の下でも学びました。『私は二十歳』の中では、タルコフスキーも少し出演してますよ。似たところがあるかどうかは、私にはよく判りませんが、彼は私の『二人のフィヨドル』(未)という作品にもスタッフとして参加してたり、学んだりしていたことなどが関係しているのかも知れません。彼の『アンドレイ・ルブリョフ』はこの作品と同時期に撮影された作品で、当時編集も隣どうしでやってましたよ。

 なお、12月6日には浜離宮朝日ホールにて、『夕立ち』及び『再生の街』の上映と、マルレン・フツィエフ監督を迎えてのシンポジウム“『知られざるロシア映画』を知る”が開催予定(シンポジウムは入場無料)。
(宮田晴夫)

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