トーキョー・フィルム・メーカーズ・コンベンションは、昨年まで日本映画製作者協会主催により開催されてきた日本インディペンデント映画祭と、東京国際映画祭のニッポン シネマ ナウを、今年より併合・改称し東京国際映画祭提携企画として新たにスタートさせたものであり、渋谷から日本映画を世界に向けて発信するイベントとして、10月29日から11月1日の4日間に渡り、渋谷の丘SHIBUYA BOXXにて開催。現在の日本映画の新たなる動きを代表する15作品が英語字幕付で上映された。
 また日本インディペンデント映画祭での、最優秀日本新人監督賞であった“新藤賞”も、“新藤兼人賞”として健在、現在の日本映画界で活躍するベテラン・プロデューサー7人が「その監督と組んで仕事をしてみたい」と思う新人監督に対し、新藤兼人賞金賞(最優秀新人監督賞・1作品=賞金100万円)、新藤兼人賞銀賞(優秀新人監督賞・1作品=賞金10万円)が授与される。さて今回の受賞は、金賞が橋口亮輔監督作品『ハッシュ!』、銀賞が西川美和監督『蛇イチゴ』にそれぞれ決定、11月1日の『ハッシュ!』上映後に授賞式が開催された。
 当日プレゼンターを務めたのは、賞の名称にもなっている日本インディペンデント映画における草分け的存在でもある名匠で、今年度の文化勲章を受賞した新藤兼人監督。新藤監督は2監督について「非常にフレッシュな感覚を受けた。私は長く監督をやっていますが、私達に無い映像感覚がどちらもあったように思います。どちらも独自の世界を描いていて、ちょっと面倒な内容を難なく捌かれて、うまく結末に辿り着いたように思います。今後日本映画を引っ張っていく二人に、拍手を贈りたいと思います」とコメント。
 橋口亮輔監督は、既に監督デビューから10年あまりのキャリアがあり、『ハッシュ!』という作品も新人賞の枠に留まらない昨年の日本映画を代表する作品との見解もあったようだが、新藤兼人賞の「監督作品3本以内」という規定をクリアしていることと、作品に対する選考陣の評価の高さ故に、橋口監督が納得してもらえるならばということで、授与になった。橋口監督は「新藤兼人監督の名前がついた賞をいただくことに、すごく緊張すると同時にとても嬉しい気持ちでいっぱいです。僕も自主映画からスタートでしたので、日本の独立系映画の基礎を築いた新藤監督の賞をいただいたのは、まだまだ頑張れとの励ましの意味もあるのかと思いました。とても嬉しく思っています」と、喜びの受賞コメントを。
 一方、西川美和監督は、是枝裕和監督作品等に助監督として参加してきた新鋭で、2003年公開となる『蛇イチゴ』が監督デビュー作だ。「橋口監督からもありましたが、新藤監督の名の賞をいただくということで、今回私が監督した『蛇イチゴ』はほとんどワンセットのホームコメディなんですが、自分の中で一番意識にあったのは新藤監督が脚本を書かれた川島雄三監督の『しとやかな獣』という学生時代から尊敬しつづけていた作品で、いつかワンセットもので小さな家族の中で起こる問題をテーマに撮りたいという思いが、自分の映画に対する芽生えだったと思います。そういう経緯もあり、今回この賞をいただいたことを嬉しく思っています」とコメント。また『蛇イチゴ』は、来年春、シネアミューズでの一般公開を前に12月に開催される第3回東京フィルメックスでプレミア上映されることも報告された。
(宮田晴夫)

□公式頁
第15回東京国際映画祭

□作品紹介
ハッシュ!
蛇イチゴ