アジアの風部門のクロージング作品として、11月3日のシアターコクーンの最終上映を飾ったのは、『JSA』で韓国本国は勿論のこと日本でも多くの支持を得たパク・チャヌク監督が、同作に主演したソン・ガンホ、シン・ハギュンと再度組んだ最新作『復讐者に憐れみを』だ。
 二人の男の救い無き復讐譚は、前作とはうって変わっての凄惨な描写ゆえに、戸惑いを隠せないファンも多かったよう。案の定質問の中には、その点を指摘するファンもいたようだが、「私の周囲の友人達は、逆に『JSA』を撮った時に、何故こういう作品を撮ったのかと聞かれましたよ。元々、私が撮りたかった作品は、こういう作品なんですよ」と静かに答えるパク監督。厳しく辛いことが多い人生なのに、映画の中では幸福を享受する人々の多いこと。そうした状況の中で、そうではない作品を撮っていきたいとのことである。
 また、それぞれの役者の魅力について訊ねられた監督は、「ソン・ガンホは、どんな時にも押さえた演技が出来、自然に役になりきるタイプ。次の作品でも一緒に仕事をしたいけど、彼のギャラが上がってるんで難しいかもしれませんね。シン・ハギュンは、口数が少なく大人しい人ですが、演技については、常に新しいことをしようと、努力しています。当初ラストは死んだ彼の顔のクローズ・アップで終わる予定でしたが、撮影中に私の考えが現在の形に変わりました。ご覧のとおり、そうすると彼のアップは無くなるわけですが、彼はそれがアイデア的にとても面白いと同意してくれたのです。そんなところも、彼の魅力です。ペ・ドゥナは、韓国で一番個性的な女優で、技巧に頼らず自身の性格で勝負してくる人です。ある意味、単純で突拍子もないかもしれませんが、同じ役を違う女優がやったら全く別物になってしまったと思えるほどに、他の女優とは違った演技を見せてくれます。私から見て、正直で率直な演技ですね」と、作品の成功に大きく寄与した3人について熱心に語った。
(宮田晴夫)

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復讐者に憐れみを