栄えある東京国際映画祭第15回記念大会を記念して特別上映された『戦争と平和』は、文豪トルストイの手による原作を、当時のソ連の国力を投入し、5年の歳月と情熱を投入し、全4部の長大な叙事詩として完成させた作品だ。モスクワでの初公開は8時間27分版だったが、その後主演も兼ねた故セルゲイ・ビンダルチュク監督が、自ら編集した7時間5分のディレクターズ・カット版(日本では93年に初公開)が、11月3日オーチャードホールにて、本作も担当したロシアを代表するアナトリー・ペトリッキー撮影監督の舞台挨拶と3度の途中休憩を挿みながら約9時間にわたる特別上映会としてフル上映されたのだ。
 第1部の上映が終わったところで、映画評論家である山田かずお氏の紹介で舞台に登場したアナトリー・ペトリツキー撮影監督は「こうして作品を観に来てくれた皆さんに感謝します。これはとても大きくて旧い作品で、現在そして将来にわたっても再び撮ることはできないでしょう。私は62年にこの作品に参加しましたが、ビンダルチュク監督はその2年前から準備を行い、70ミリ・シネスコという挑戦的な取り組みがなされたものです。最後まで観ていただければ、特にそのモブシーンの凄さに圧倒されるでしょう。この世におられないことが残念ですが、監督は文学大国ロシアの作品に真剣に取り組みました。」と挨拶。戦闘場面では多くのカメラを同時に回し、1万2千人の兵士、2万2千等の騎馬そしてサーカスのメンバーも多数参加しスタント場面に挑み、事故や怪我等は一切無かったことなど歴史的大作にまつわる貴重なエピソードも披露される等、観客にとって興味深い一時となった。
(宮田晴夫)

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第15回東京国際映画祭
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戦争と平和