東京国際映画祭9日目の3日、翌日に迫ったコンペティション結果発表に先駆けて、アジア映画賞が発表され、その授賞式がシアターコクーンにて行われた。
 アジア映画賞は、アジアにおける映画制作の振興と映画作家の支援、アジアの映画人の交流の促進を目的に、第10回大会より設けられている。本年は、アジアの風部門の12作品(ショウ・ブラザース特集を除く)とトーキョー・フィルム・メーカーズ・コンベンション部門からの3作品、合計15作品が審査対象となった。
 審査員の厳正な審査により選ばれたのは、スリランカのアソカ・ハンダガマ監督による「この翼で飛べたら」で、賞金100万円と渋谷区長賞として賞状とトロフィーが授与された。
 この作品は、男になりきって暮らす女性が、事故に遭ったことがきっかけとなり女であることを周囲に知られ、その生活が脅かされていく様を描いたものである。
 審査委員長の河原畑寧氏は、
「この映画は、9月にサンセバスチャン国際映画祭でレズビアンとホモセクシュアリティの現実をもっともよく描いた映画として賞を贈られたが、私たちとしては、もっと広く一般的な映画として推奨したい。現実を掘り下げた大変すぐれた興味深い映画だと思っています」と、本作品が選ばれた理由を述べた。
 授賞式の席に現れたハンダガマ監督は、セクシュアリティの問題を取り上げた前作「マイ・ムーン」が同じく東京国際映画祭で紹介されたことがあるが、今回の受賞については
「私の受賞は、スリランカ映画界にとっても名誉なことだと思います。私自身、この映画祭ではアジアの映画のほとんどを見ましたが、みな、素晴らしい作品で、その中から私の作品が選ばれたのは本当にラッキーだったと思います」とコメントした。
 今回の審査では、日韓合作でトーキョー・フィルム・メーカーズ・コンベンションで上映された金守珍監督の「夜をかけて」、アジアの風部門のイランのナセル・レファイ監督の「入学試験」が、「この翼で飛べたら」と競った作品として挙げられていた。

■東京国際映画祭公式サイト http://www.tiff-jp.net