巨匠ロマン・ポランスキー監督の第55回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作である『戦場のピアニスト』の来日記者会見が行われた。会場には実在の人物であるピアニストのウワディスワフ・シュピルマンを演じたエイドリアン・ブロディが登場。連日の取材で渋谷の街をまだ十分に満喫できていないエイドリアンだが、出会った女性はみんな美しいと絶賛。会場の笑いを誘った。

まずカンヌでの受賞時の気持ちを問われると、「映画を作った甲斐があったと思った。」といい、「賞を貰うことは認められた証になるし、みんなが作品に興味をもってくれるのでとてもうれしい。でも賞を狙っていたわけではないし、15分にわたるスタンディングオベイションが一番うれしかった。」と答えた。
次にロマン・ポランスキー監督について問われると「これまでさまざまな監督と仕事をして、いろいろなことを学んだ。ポランスキーとは個人的にも親密な関係だけど、監督ということでみると、彼は自分が欲しいものがなにかをとてもよくわかっている。リアリティを強く出すとともに繊細な描き方ができる監督だ。」と語った。
今回演じた役はピアニスト。そのことに絡み、「ロンドンの新聞では演技経験が浅くても、ピアノがひける人を募集していたらしいね。でも僕はこのオーデションではなく、監督に見出してもらったんだ。ピアノが特にできるわけではなかったけど、撮影にのぞむにあたってレッスンを受けた。なかなかの上達ぶりで今後もピアノをひくことを進められた。でも今はもう弾いてないね。」と語るエイドリアン。ナチス将校にショパンを弾いてみせる4分以上の場面は圧巻だ。
また今後どんな作品への出演を望むか、という問いには「シリアスな恋愛映画がいいね。」と微笑んだ。
ここで特別ゲストとしてウワディスワフ・シュピルマンの息子であるクリストファー・W・A・スピルマンが登場。94年より日本に在住し、日本語が堪能な彼は登場するなり日本語で流暢にしゃべりだし、集まった報道陣を驚かせた。しかし「自分の父が映画化されるとは思わなかった。ましてやその作品が日本で公開されるなんてね。そして自分がここにこうしているとはね。」と本人もかなり驚きでいっぱいの様子。出来上がった映画を観た感想を問われると「エイドリアンの演技が実は一番心配だったんだ。ところが、どうだろう。観ているうちに違和感が全くなくなってしまったんだ。まるで自分の父を見ているようだった。エイドリアンの素晴らしい演技に心から感謝しているよ。」と満面の笑みを浮かべた。
最後にエイドリアンに実在した人物を演じるにあたり、どのような取り組みをしたかについて問われると「プレッシャーを感じたよ。有名な人だったし。世界中で愛されている人だったから。自分の持てる力をすべて注いだ。」といい、さらに「僕は単身ヨーロッパに渡った。家や車を売ってね。体重も減らし、一旦自分を捨ててこの役にのぞんだ。大変な苦痛もあったが、今はこの役を演じることができて、心からよかったと思っているよ。」と締めくくった。

この作品は東京国際映画祭で本日上映されるとともに、2003年2月より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショーされる。(Mika Saiga)