東京国際映画祭の協賛企画として10月27日から「コリアン・シネマ・ウィーク2002」が開催され、新作6本が紹介されている。10月28日は、キム・ユンジン主演で注目を集める「イエスタデイ」が上映され、チョン・ユンス監督のティーチインが行われた。
 本作は、南北統一後の近未来を舞台にしたSFスリラー。とある連続殺人事件の被害者たちには見つかった共通点は、30年前に謎のプロジェクトに関わっていたことだった。父親である長官を犯人(チェ・ミンス)に誘拐された女性犯罪心理学者(キム・ユンジン)と、事件に巻き込まれ死んだ我が子からクローンを作ることを考える刑事(キム・スンウ)らが、この殺人事件を追う。ルカと呼ばれるそのプロジェクトの正体は何なのか。
「韓国では、むずかしい映画だという批判が多かった。クローン人間の倫理が確立されていないなかで、そのことを考えてみたかった。近未来をシビアに分析する、という観点で描いた」と語るチョン監督。
 「シュリ」のキム・ユンジンに、「ユリョン」のチェ・ミンスなどスター俳優が揃っているが、監督本位の作品か俳優本位の作品かという会場からの質問には
「本作のような設定の映画のものは、ドライに登場人物を描いていく必要があるので、俳優個々人のキャラは消してもらう方向で進めた。チェ・ミンスには彼自身いろいろこだわりがあったが、脚本完成前にいろいろ話し合い、妥協点を見出して彼もそれに従って演じた」とスクリーンに出てこない舞台裏の話も披露した。
 SFというとハリウッド映画以外では、コストなどの現実的問題が立ちはだかるものだが、そういうなかで「韓国人の知らない未来に人々を放りこんだ。未来都市のイメージとして、その密度、浮遊感やスラム化、広がりを描写しようとした。未来も現在も変わらない人間の真理があるのではないか」とも。
 本作が監督デビューらしく、本作をきっかけに観客が何を望むか探る必要性も感じたとか。この日本でも、観客の顔を覗きこむように前かがみになって質問に耳を傾け、答える姿が印象的だった。(みくに杏子)