『回路』以来2年ぶり、待望の黒沢清監督作品、『アカルイミライ』が遂に完成した。黒沢監督とは、初の顔合わせとなるオダギリジョー、浅野忠信、藤竜也という世代を超えたキャスト陣の競演により、相容れない価値観を持つ人々が、互いを理解できないことを受け入れつつ共存していく現実が感動的に描かれていく。また、黒沢作品としては初の全篇24PHDとDVによるオールロケが敢行され、夜の部屋の水槽でゆらめく海月をとらえたショットをはじめ、そのデジタル機器の特性を十二分に活かし、光と闇が鮮明なコントラストを描く映像も注目だ。
10月16日、銀座ガスホールにて、まさにその前日に完成したばかりという本作の、完成披露試写会が開催され、上映前には黒沢監督はじめ主要キャストによる、舞台挨拶が行われた。長いポストプロダクションを経て完成した作品と共に、久々の再会を果たした4人の表情は、撮影中に培われた空気と達成感で実に晴れやかだった。

黒沢清監督——昨日完成したばかりで、僕も完成したものを昨日の夜初めて観ました。次の日にこうして皆さんにお見せするというのは初めてのことで、正直緊張しています。4月に3週間で撮影をしたものがようやく昨日完成し、再び出演者の方々と今日お逢いできて、僕にしては長い間かかって出来た映画ですけど、やっと何か一つ遣り遂げたという気が今しています。
ご覧のように、メインの出演者はほとんど男ばかりで、3人とは全く初めてでもあったんですが、特に男っぽい映画を撮ろうと思ったわけではないのですが、男についての映画になったのかしら…たまたま人間が男だっただけなんですけど、ほとんど男ばかりの現場だったし…。男が出てくる映画を沢山撮っていますけど、ここまでというのは初めてで、出来がどうとかは僕の中でも未だ判らないのですが、なかでも特別なものになったのかしらと思っています。これまでとは違いますね。『回路』みたいなものを期待している方は、違いますよ。ホラー映画ではありません。それだけは言っておきます。ゆっくり楽しんでください。

藤竜也(有田真一郎役)——この映画は『アカルイミライ』。“アカルイミライ”はある、“アカルイミライ”は俺が引き受ける、“アカルイミライ”は無い、そういう“アカルイミライ”後につける言葉を捜す映画ではないかと思います。
脚本をいただいた時は、まさしく今の時代、途方に暮れた時代の空気というものを感じました。浅野さんとは前に一度共演したことがありますが、本当にいい味を出す人で、オダギリさんは本当に心優しい青年。僕らの仕事場では、ものを創り出すのに年代とか性別とか一切超越してしまうんだね。なんてすごい仕事場なんだろうと思います。

オダギリジョー(仁村雄二役)——僕自身も4月に撮影してまして、出来上がりが全く予想つかないので、皆さまと同様思いっきり期待しております。一緒に楽しんで帰りたいと思っています。
ずっと映画をやりたくて役者になってやってきて、初めての主演作品で黒沢監督、浅野さんほか色々な方々と出来たということが、本当に嬉しいですね。3週間の撮影は、もう少し長くてもよかったと思います。いい3週間でした。

浅野忠信(有田守役)——僕も未だ映画を見れてないのですが、この映画を引き受けた時、脚本の中に流れる不思議な空気感みたいなものが気になっていて、それを黒沢監督が撮ってくれると聞いた時に、すごい面白いものが撮れるかもしれないと思ったんで、僕も今日見れることを楽しみにしています。
現場は静かに流れる感じがすごく居心地が良くて、監督は演出なさる時にすごくソフトに演出してくださるんです。そうすると、こちらも頷かないわけにはいかないみたいな(笑)。それが非常に楽しかったです。

なお、『アカルイミライ』は12月に開催される第3回東京フィルメックスにて特別招待作品として上映され、明けて2003年1月中旬より渋谷シネ・アミューズにて、ロードショー公開!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
アカルイミライ