恩田陸原作のミステリー『木曜組曲』が映画化され、この10月よりロードショー公開される。謎の死を遂げた女流作家が棲んでいた洋館に、毎年彼女を偲んで集まる5人女達。ゆかりの者たちによる平穏な恒例の行事だったはずが、花束と共に届けられた一通のメッセージにより今年の集まりは、不穏な空気に満たされていく…。舞台をほぼ洋館のみに絞った物語は、一見地味な舞台劇を想起させるかもしれないが、料理を含めディティールに拘った美術やセットと、篠原哲雄監督の細かいカット割りや場面構成に拘った演出、そして何より個性的な女優陣による静かでありながらテンションの高い演技で、実に映画的な興奮に満ち満ちた作品に仕上がっている。
 本作の完成披露社会が、9月26日‘木曜日’によみうりホールにて開催され、篠原監督と作品のゴージャスさと緊張感を醸し出した6人のヒロインがゲストとして登場。華やかな空気の中で、舞台挨拶が行われた。

篠原哲雄監督——やっと満を持して公開ということで、皆さんと会うのも1年半ぶりくらい。1年半くらい前に撮影して、今日始めて皆さんにお見せできる運びになりました。秋に公開したかったとか色々ありまして、満を持しての公開なんです。兎に角6人が集まりますと、撮影したときの気分に戻りまして、一気に『木曜組曲』の雰囲気になったなという感じですね。ある洋館を舞台に、作家先生が亡くなって、偲んで集まってくる5人がいてという想定なんですが、僕はすごく楽しくてたまらなかったです。これだけの方達を演出すると言うのは、監督冥利につきまして、退きのカットがあるとか、5角形のテーブルを設定したので、それぞれ5人の表情を5通り撮る、つまり最低6通りは撮っているんですね。他にも角度を変えたり、趣向を凝らして撮りまして、この6人の方の様々な姿を堪能できる映画だと思いますので、ゆっくりじっくり味わって見てもらえば嬉しく思います。

西田尚美さん(杉本つかさ役)——今日久しぶりに女優さん達と逢って、緊張しています。でもなんか、『木曜組曲』の時の過酷な毎日を思い出してしまいました。朝から朝まで撮影と言うのが日々続きまして、肌がボロボロでもそういうことは映画では一切見えていません(笑)。楽しんでください。

富田靖子さん(林田尚美役)——苦労は無かったです。楽しかったです。確かに朝から朝まででしたよね(笑)。それでも、皆さんとご一緒できたことがとても嬉しくて、篠原監督が皆さんをどういう風に演出するのか見ていたら、時間がたてばたつほど水が流れるように、監督が思いの方に流れていく現場だったように思います。

鈴木京香さん(塩谷絵里子役)——今回私は、こんなにカッコいい女優さんたちと仕事が出来たことが一番の収穫だったと思っています。兎に角皆一丸となって、バレーボールのチームのようになって頑張りました…と言ったら“東洋の魔女”だと言われました(笑)。ですから皆で、一生懸命いいチームを作って監督について行ったといった感じで、皆さんに自信満々で御見せできます。どうぞ堪能してください。

原田美枝子さん(川渕静子役)——一年半も前のことなので、ちょっと忘れてしまいそうなんですけど、こういう風に女優さんが6人集まって、ほとんどワンセットでもって、ずっと喋りながら、食べながら、話が展開していくと言う、ありそうでなかった映画だと思いますので、是非楽しんでください。

加藤登紀子さん(綾部えい子役)——実はこの映画の主人公、話題の中心がトキコ(時子)さんなんですね。くれぐれも、これだけは憶えておいて。私はえい子です。時子ではございません。私の台詞で一番多かったのが「時子さん」で、そちらは浅丘ルリ子さんですので、映画をご覧になった方が、混乱しないでいただければと思います。一番怪しい女を演っています。初めての映画『居酒屋兆治』は高倉健さんの奥さん役だったんですが、その時健さんから「映画はそこに貴方がいるだけでいいんです」と言われまして、素晴らしい助言だったと思います。今回もここにいるだけで、素晴らしい女優さんたちだったので、演技をするということの苦労は何もなかったです。とても自然で、台詞が無事に言えればOKくらいで。でも映画になってみてびっくりで、一緒に撮影している時は、皆普通の人たちなんですけど、映画になったら「オォッ!」って思って、映画と言うのはこういうものなのかと、すごく後で反省しました。普通に一緒にやってたつもりでしたけど、私が女優だったかどうかはよく判らないですね。

浅丘ルリ子さん(重松時子役)——本当に映画は、『寅さん』の48作の最後からずっとやっておりませんでした。舞台のほうにずっと出てまして、映画は本当に久しぶりでした。5人の女優の皆さんは、本当に大変だったみたいです。一人が台詞を喋り、そのリアクションを撮るのに何時間もかかって、朝から朝まで大変だったらしいです。でも私はなんて得なことに、ほんのちょっぴりしか出ていないのに、話の中心は私になっているんです。何故私この役をやったかと言うと、出番が少ないけど得な役ということでやらさせていただきました(笑)。皆さんと一緒になるところはワンシーンしか無く、後は個々の方とご一緒する感じでしたが、初めて経験することも映画の中で沢山出てきますし、兎に角何を言うより見ていただければお判りになると思いますので、じっくりご覧になっていただきたいと思います。

なお、『木曜組曲』は10月12日より、銀座シネ・ラ・セットほか全国順次ロードショー公開!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
木曜組曲