昨年の東京ファンタのクロージングを飾り、派手なVFX満載で描かれたホラー・ワールドが劇場を沸かせた『13ゴースト』が、まだまだ残暑の厳しい日本で観客を震え上がらせようと、8月31日よりロードショー公開がスタートした。
 そして公開前夜の8月31日、仰々しくも「お払い付体感“ギミック”シアターと」銘打たれた本作の特別先行上映会が渋谷東急3にて開催された。
 この作品は、ジョエル・シルバーとロバート・ゼメキスというエンターテイメントを知り抜いた二人が主宰する、ホラー専門プロダクション、“ダークキャッスル・エンターテイメント”の第2弾製作作品であり、会社名の由来となっているホラー・マイカー、ウィリアム・キャッスルの60年監督作品『13 GHOSTS』のパワー・アップ・リメイクだ。キャッスルは、本作のオリジナル版では、眼鏡をかけると幽霊が見える特製メガネを入場者に配ったのをはじめ、劇場内をワイヤー仕掛けの幽霊が舞ったり、椅子が振動し客を驚かしたり、ショック死保険をかけるなどなど、映画の上映に際し様々な仕掛けを用意し、そのプリミティブながら見世物根性に徹した興行から“ギミックの帝王”の異名を轟かしていたことは、ホラー・ファンには有名(…と言っても、かなり年季の入ったファンでもなければ実際に体験したことはないだろうが)だ。今回の特別先行上映では、そんなオリジナル版のサービス精神を、観客が身を持って体験できるように様々な趣向が凝らされた、一夜限りのスペシャル企画だ。観客は、グロテスクな死化粧が施され、ノリノリのゾンビの歓迎の中をおっかなびっくりと入場。劇場ロビー内には代々木アニメーション学院の協力により、リアルなゾンビのプロップが飾られ、また特設されたブースではスペシャル・メイクの体験コーナーが開催され、多くの参加者が痛々しい傷痕を手首等に施してもらったりと、観客は上映前からしっかりとホラー気分を満喫している。
 そうこうするうちにイベントの方も、今回の特別上映に企画協力している東京国際ファンタスティック映画祭でディレクターをつとめる大場氏と、映画パーソナリティの伊藤さとりさんの司会進行でスタート。作品とキャッスルに関しての話とともに、同じく東急文化会館内渋谷パンティオンで開催される東京国際ファンタスティック映画祭2002の最新情報も一部披露された。今年のファンタは10月25日から11月1日の8日間、全日オールナイトで開催され、オープニング作品は話題の韓国映画『火山高』に決定。ここまでは、すでに公式頁等でご存知の方も多いと思うが、クロージング作品は決定したがあくまで上映当日のお楽しみという完全スニーク・プレビュー上映になる。これはそれだけ強力な作品を選んだという、映画祭側の自負と気迫の現れということで、当日の上映が実に楽しみだ。また、ホラー・ナイトの作品として、あの伝説のスプラッター・ムービー『死霊のはらわた』の20周年を記念して特典映像満載&ニュープリントでの上映が決定、さらにゲストとしてサム・ライミ監督が来場するかも!?とのことで、熱い“20周年はらわた祭り”が実現しそう。前売券は9月28日より発売予定だ。
 この後、今宵のイベントに悪しきものが寄ってこないように、また作品の成功と来場者全員の憑きもの落しということで、神々しく“おはらい”が行われたのに続き、恐怖漫画の第一人者で心霊研究家でもあるつのだじろう氏と、『自殺サークル』等に出演している嘉門洋子さんをゲスト迎えて、トークショーが開催された。「驚愕系のものとしては面白く見た」(つのだ氏)、「ずっと驚かせられる内容で、怖かった」(嘉門さん)とそれぞれ感想を語ったのに続き、つのだ氏が本作に登場する霊視ゴーグルの現実版として、“オーラ・ゴーグル”なるグッズを披露。なんでも心霊研究に赴いた英国で、注文生産させたものとのことだが、このゴーグルを嘉門さんが実際に試したあたりから、その胡散臭い形状故か、はたまたつのだ氏のオヤジノリ発言故か、“最恐”のはずのトークショーは“爆笑”のトークショーへ。とりあえず、霊に出会ったら関わらないようにする…と言う、姿勢だけは憶えておこう(笑)。
 そしていよいよ、体感“ギミック”シアターの開幕だ。気になる上映形態は、本編のフラッシュ・イメージ的な映像に併せ場内に閃光が走り、劇中で亡霊が出現すると死霊が通路を闊歩するというベタさがなんとも楽しいぞ。また冒頭で亡霊の餌として鮮血が撒かれる場面では、一部の観客には実際自分に何かが降りかかる!そのプリミティヴな仕掛けには、苦笑するしかなかったけれど、映画は見世物という原点に立ち返りそれを満喫できるスペシャル上映に、観客は楽しい悲鳴をあげていた。

なお、『13ゴースト』は渋谷東急3ほかにて、“地獄の開門”ロードショー公開中!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
13ゴースト