“死のうとする太宰治ではなく、生きようとする太宰治を描いた”猪瀬直樹著『ピカレスク太宰治伝』の映画化、『ピカレスク 人間失格』が27日初日を迎えた。ミュージシャンをはじめマルチな活躍をする河村隆一さんが太宰治を演じる本作、前評判の高さ故に新宿東急で早朝に催された追加上映は、女性ファンを中心とした観客で大盛況。上映終了後には、河村さんをはじめ、太宰を愛した女たちを演じた女優陣、佐野史郎さん、伊藤秀裕監督による舞台挨拶が行われた。

朱門みず穂さん(田辺なつみ役)——『ピカレスク』では愛にために心中をしました。長年の夢だった心中を映画の中でできて、ひじょうに嬉しく死ぬことができました(笑)

緒川たまきさん(大田静役)——私は大田静がモデルとなった『斜陽』の大ファンでしたので、実際に演じることができて本当に生きていてよかったなと思います。

裕木奈江さん(西原佐知子役)——綺麗な女優さんたちの中で囲まれて、私は心中を持ちかけてもらえない役なんですけど、現場は楽しくやることができました。

とよた真帆さん(山口冨美栄役)——実話で本当に太宰と一緒に心中をした役ということで、彼女の残した日記を片手に肌身離さず一生懸命演じました。本当に幸せです。

佐野史郎さん(井伏鱒二役)——悪人です。全編私は「あぁ、うぅ」で楽して申し訳ございません(笑)。僕は猪瀬さんの原作がかなり好きで、そこでは盗作の達人みたいに描かれていまして悪役ですけど、面白ければなんでもいいんじゃないかと(笑)楽しく演じられました。

河村隆一さん(太宰治役)——今回は本当に役得と言うか、いい縁が沢山ありまして、約1ヵ月半の撮影を新鮮な気分で過ごすことが出来ました。佐野史郎さんはじめ皆さんから、役者としては何もわからない中沢山のアドバイスをいただき楽しい現場でした。僕は最初、太宰をあまり好きではなかったのですが、太宰ほど生きることに拘った人はいないんじゃないかと思いました。
僕は役者と言う経験は本当に数少ないのですが、いつも照れくさい現場を経験してきました。でも今回は、何一つ照れくさいと思うシーンが無く、映画って皆こんなに真剣にやるのだとリスペクトでき、いいものをもらったなという感じの映画出演でした。皆さんのアンコールの声があれば、この映画は全国に広がっていくと思いますので、是非何度も足を運んで太宰が本当はどんな人で、誰を愛したかそのあたりを感じて、プレイバックしていただけたら嬉しいと思います。宜しくお願いします。

伊藤秀裕監督——河村隆一さんはじめここにいらっしゃる皆さんは、つわものです。河村さんは初めてだったということもあったんですが、周りを囲む女優さんたちは、それぞれ自分が一番太宰に愛されていたのかと訊ね、その都度僕はそうだって答えて、そういうことが役に立ちいい緊張感が出たと思います。
作品は去年の暮れに仕上がったんですが、実際にこうして観てもらえて映画は成立するものだと思います。皆さんがどのように感じられたかということが大事だと思いますので、よろしくお願いします。

なお、本作の原作を著した猪瀬直樹氏は仕事の都合上出席出来なかったが、「太宰が学生から作家へステップ・アップしていく姿と、河村さんの映画俳優としての成長の姿が重なっていた。太宰が関わった女性たちも僕のイメージどおり」というコメントが紹介された。

『ピカレスク 人間失格』はシネマスクエアとうきゅうにて、ロードショー公開中!。
(宮田晴夫)

□作品紹介
ピカレスク 人間失格