人気アーティスト・河村隆一が、『走れメロス』『人間失格』などで知られる作家・太宰治を演じる話題の映画『ピカレスク 人間失格』(原作:猪瀬直樹「ピカレスク 太宰治伝」小学館刊)。7月27日(土)より新宿・シネマスクエアとうきゅうで公開されるこの映画の完成披露試写会が、7月17日(水)渋谷・クロスタワーホールで行われた。

上映前には舞台挨拶も行われ、主演の河村隆一と伊藤秀裕監督がゲストで出席。また、この日が「映画からインスピレーションを受けて作った」という、映画主題歌「Stop the time forever」も収録されたコンセプトアルバム『人間失格』の発売日ということもあり、ロビーでの発売も大盛況だった。

今回は、舞台挨拶のコメントの一部を紹介する。

■ステージコメント
挨拶
伊藤秀裕(監督)
今日は、河村隆一くんのお供でやってきました(笑)。とても不思議で面白い映画なので、最後まで楽しんで見てください。

河村隆一(太宰治 役)
伊藤監督は音楽がとても好きな方で、その監督に口説かれて映画の世界に足を踏み入れました。「太宰治は何を考えて生きてきたのか?」を精一杯監督と話し合って、あっと言うまに撮影が終わって、今日の完成披露試写会まできました。よろしくお願いします。

太宰治役に河村隆一さんを決めた理由は?
伊藤秀裕
オーディションで有名な女優さんを落とすような、見る目のない自分ですが(笑)、あるとき人に誘われて河村さんのライブを見に行ったときに、歌う立ち姿に太宰治のイメージが不思議とわいてきたんです。「この人なら(太宰治が)できるんじゃないか」と、ほとんど冒険状態でお願いしました。

監督からオファーが来たとき、どう思われましたか?
河村隆一
10代のころいろいろな小説を読んでいましたけど、太宰治の小説は『人間失格』くらいしか記憶に残っていませんでした。その当時は、あまり好きなタイプの作家ではなかったので。でも、監督がライブ会場に何度も足を運んでくださり、改めて小説を読み返したら年齢のせいもあるんでしょうけれど、太宰治の人間らしさに共感したんですね。

監督には「お芝居はできませんよ」と最初に断ったうえで「自分なりに太宰治になりきる」ことで映画に出ることを決めました。気がつけば、映画初出演でした(笑)。

演じる前に何かしたことはありますか?
河村隆一
太宰治が生きていたころを知っている人は今は少なく、太宰治に関して残っている資料は、後世の人の解釈も加わっている記録が多いんです。そういう資料を監督と見たり読んだりしました。

後はお芝居の技術で見せていくのではなく、「太宰治の気持ち」になっていろいろと考えられる状況を監督やスタッフに作っていただき、自然と太宰治が入ってきた感じですね。
クランクインが首を吊るシーンからで(笑)、そこに監督の愛情をすごく感じました。「思い切りよく死んでください。そこから貴方は河村隆一ではなく太宰治です」みたいな(笑)。細かいことは考えずに短い期間で自然と太宰治になりきっていましたね。

河村さんが演じる太宰治を見て、どう思われましたか?
伊藤秀裕
「河村隆一が太宰治を演じるのではなく、河村隆一の中に太宰治が入っていった」感じでした。最後の方ではほとんど一体でした。太宰治はナルシストでしたけれど、完璧な人間じゃありませんでした。そういうところもしっかり演じられてましたね。

太宰治を演じて、感じたことは?
河村隆一
昭和初期に作家の世界は、今に例えれば芸能界や音楽界と似ていると思うんです。そんな中で苦労をしていた太宰治と、自分の状況が似ていると思いました。もし自分が太宰治と同じ時代に生きていたなら、どんなに偏屈な人であったとしても彼とお酒を飲んでみたかったですね。

コンセプトアルバムは、どのようにして生まれたんですか?
河村隆一
この映画に出ることで、今までにない新人としての自分を感じ、自分の中のポジティブなものを作りたいと思ったんです。曖昧さをできるだけ排除したより完璧なものを作った方がいいんじゃないかなぁと…。それを再確認したということですね。

完成した映画を見てどう思われましたか?
河村隆一
映画の世界は初めてで、プロフェッショナル性を感じました。監督はもちろんスタッフのみなさん一人一人がワンシーン、ワンカットにこだわる方たちばかりで、何度も取り直したりしました。今までのテレビドラマでは、限られた時間の中で撮っていかなくてはいけなかったので、こんなにプロフェッショナルな世界を感じるのは初めてでした。

最後に、メッセージをお願いします。
伊藤秀裕
この映画は、太宰治の19歳から39歳で死ぬまでの20年間を描いています。河村隆一くんがその20年間をどう演じたかが見どころですね。よろしくお願いします。

河村隆一
多くを語ると面白くなくなってしまうのですが…河村隆一ではなくそこに太宰治がいることを感じてほしいと思います。スタッフのこだわりがすごく面白い作品なので、家族や友人などたくさんの人に宣伝してください(笑)。

□作品紹介
ピカレスク 人間失格