『blue』モスクワ国際映画祭最優秀女優賞受賞記者会見開催!「実感が湧くにはもう少し時間がかかるのかな」
恋愛や友情のリアルな感情の機微に定評のある魚喃キリコさんのコミックスの初映画化が完成した。映画化された作品は、彼女の長編デビュー作に当たる『blue』。周りの同級生とは異なる空気を漂わせる遠藤に憧れを抱く桐島カヤ子を中心に、少女達の淡い恋心、嫉妬、憧れを瑞々しく描いた作品だ。主人公霧島を演じるのは、先頃公開された『とらばいゆ』でも好演を見せた市川実日子さん。話を聞いたときには、『とらばいゆ』では子悪魔風な雰囲気を醸し出しながらも、しっかりと大人の女性棋士を演じていたのに、高校生役ってあり…?などと個人的には感じていたのだが、実際にスクリーンに映し出された彼女の表情や仕草は10代のリアルさを鮮烈に見せつけ、原作者も「桐島を実在させてくれて感謝」と賛辞を贈り、また6月に開催された第24回モスクワ映画祭ではコンペティション部門に参加すると、見事に最優秀女優賞に輝いたのだ。
7月11日、映画美学校にて本作が日本のマスコミ関係者へ初お披露目され、また引き続き安藤尋監督と市川さんが出席してモスクワ国際映画祭最優秀女優賞受賞記者会見が行われ、授与されたトロフィーも披露された。
Q.第24回モスクワ映画祭に参加されての感想をお願いします
安藤尋監督——栄えあるモスクワ映画祭のコンペティション部門に選ばれたこと自体が何よりも嬉しかったが、その中で最優秀女優賞という形で市川さんが受賞されたことは、驚きと共に嬉しい。
市川実日子さん——モスクワは今1日18時間ととても陽が長くて、とても楽しかったです。モスクワって寒いイメージだったんですけど、日本とあまり変わらずなおかつ陽が長い。
この作品は、初号、モスクワ、本日と3回観ましたが、映画祭の会場は2300人のすごく大きなところで、そこで『blue』を観たんですけど、環境が異なるモスクワでが一番客観的に見れましたね。なんか私達がからすると、意味わからないところで笑ってたりとかもありましたけど…。
安藤監督——笑わせる映画じゃないはずなんだけど、思わぬところで爆笑が起きたり…笑うんじゃないよみたいなのもありましたが(笑)、それだけ作品を観てくれているってことにも繋がりますので、よかったなと思いますね。
Q.受賞された時の気分はいかがでしたか?
市川実日子さん——ロシア語だから何言ってるかわからないでボーっとしてたら、ヤポーンの『blue』ミカコ・イチカワって言われて、えぇって。何だか判らないけど、ステージに上がってトロフィーをいただいて…。現実じゃないみたいだった。受賞後の取材で、何を受賞したのって聞いたくらいで(笑)。今はこうしてトロフィーがあったり、こういう機会があったりと目に見えるものはあるんですけど、実感が沸くにはもう少し時間がかかるのかな。
Q.女の子同士で愛しあう物語ですが、どのように感じましたか。また、役作りで苦労されたことなどありますか?
市川さん——女の子同士という感覚ではなくて、たまたま強く惹かれた人が女の子だったってことだって思ってます。苦労した点ですか?5年ぶりの制服でしたが、制服マジックもあるなって…これで最後ですけど(笑)。初主演の緊張感はありましたね。
安藤監督——いい意味で緊張感を持続してくれました。8月下旬から9月というキツイ期間にほとんど休みも無かったんですが、精神的にも肉体的にも積極的にぶつかってきてくれたと思ってます。
Q.作品の見所は?
市川さん——音楽と絵がすごく綺麗です。
安藤監督——それも勿論ありますけど、描かれている世界はすごく些細な世界かもしれないけど、そこに流れてる彼女達の感情というのはすごく色々な人に伝わっていく、ある種普遍性のあるものなのだと思って撮ってきました。それが小さなものから大きなものへ伝わっていくのが判ってくれるとすごく嬉しいかなと思います。
Q.今後どういう女優を目差されますか?
市川さん——あまり先…というよりも、お話いただいたものに緊張感を持って向かっていきたいです。
なお、『blue』は渋谷シネアミューズにて、2003年2月よりロードショー公開予定!。
(宮田晴夫)
□作品紹介
blue