藤田宜永氏の小説『虜』を原作に、達者な演技陣の競演で中年男女の摩訶不思議な関係性を、ユーモラスにまた秘密めいた香りを感じさせつつ映画化した『笑う蛙』が、7月6日新宿武蔵野館で公開初日を迎えた。初回の上映が終わり、共犯関係とでもいうのだろうか、不思議な連帯感と満足感に満ちた劇場では、本作でなんとも情けなくも男ならどこかで共感を感せずにはいられない主人公・倉沢逸平に扮した長塚京三さんと、平山秀幸監督による初日舞台挨拶が行われた。
 まずは二人からの、初日を迎えての心境の挨拶から。「朝から宣伝文句とはちょっと違う映画を観ていただいて、面映い気持ちです。丁度去年の今頃撮影した作品で、やっと初日を迎え喜びでいっぱいです。」(平山監督)、「この作品は、わけがわかったもの同士が、ちょっと確信犯風な目配せをするという風な、なかなか一言でこうだと名状し難いものととらえています。だから、皆さんには面白かったら10人の方々にこの映画についてお話していただきたい。そうした声が遠くへと届いていけば、こういう味わいの映画を平山監督がまた撮れ、そして僕も参加できるかもしれないですから。よろしくお願いします」(長塚さん)。
 平山監督と長塚さんの最初の仕事は、92年の『ザ・中学教師』から。俳優と親しくすることはほとんど無いという平山監督だが、長塚さんとは仕事だけではなくプライベートでも気心が知った関係を持ち続けているそうだ。『ザ・中学教師』での背筋の伸びたハードな教師像や、世間から“理想の上司”像として名前があがる長塚さんも、平山監督の「世にも情けない役があるけど?」との打診に、快く引き受けるなど両者の信頼関係はあつい。また、それぞれベテランとして活躍中のお二人だが、実は今回の映画で初めて経験したことがある。それは、男女のラブシーン。「現場の視線が下がりがちで、なんとなく照れてやってましたね。」とは平山監督の弁。でも現場では、長塚氏の素っ頓狂な応対などで笑いが絶えず「ラブ・シーンは、緊張したギスギスした感じじゃなくて笑いながら撮らなきゃいけないものだ」とのこと。一方の長塚さんは、「監督とカメラマンの柴崎さんの表情を見てる方が面白かったですね。じっくり観察させていただきました」とクールに笑みを浮かべる。
 ところで、実は7月6日は長塚さんの57歳の誕生日でもあったのだ。MCの伊藤さとりさんからそのことが報告され、場内から拍手が沸き起こる中、本作で逸平の義姉、咲子を演じた金久美子さんが、「ハッピー・バースデイ」を朗々と歌いながら登場、「お誕生日と重なっての上映開始とぴうことで、本当に嬉しい日となりました。おめでとうございます」と花束をプレゼント。平山監督も、「年齢をいうと本当に嬉しいかどうかは判らないと思うけど、元気で頑張ってください」とお祝いの言葉を贈った。長塚さんは思わぬお祝いに、「元気で頑張って行って、5年か10年後には丹下左膳のようなものを演りたいので、監督頼みます(笑)。今日は公私混同してすいません。ありがとうございました」と照れながら返した。

なお、『笑う蛙』は新宿武蔵野館にて、ロードショー公開中!。なお、同劇場では現在『笑う蛙』公開記念特集上映企画として“全身活動屋・平山秀幸”と銘打った平山監督作品連続レイト上映企画も開催中。現在、『ザ・中学教師』が上映中で、7月8日(月)の上映前には、再び平山監督と長塚さんが来場してのスペシャル・トークショーも開催される。
(宮田晴夫)

“全身活動屋・平山秀幸” @新宿武蔵野館 連日21:20〜 \1,300均一

7/06(土)〜7/12(金) ザ・中学教師
7/13(土)〜7/19(金) ターン
7/20(土)〜7/26(金) 愛を乞うひと

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笑う蛙

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完成披露試写会レポート