フランス映画の3本に1本は女性監督という。「なかでもオピニオンリーダーといえるカトリーヌ・ブレイヤ監督」(トスカンユニフランス会長:談)の「セックス・イズ・コメディ」が日曜日の3本目に登場。本篇はブレイヤ監督を彷彿させる女性監督をアンヌ・パリローが演じた映画製作の内幕ものである。上映前舞台挨拶で「日本語には影武者という言葉があります。フランス語には訳しにくい言葉ね。同じように日本語でセックスは表現しづらいものと思うの。性のことを表現するためにニセモノを使い、本物のように見せるっていうのがこの映画の意図でもあるのよ。影武者のようにね」と意味深なコメントを残したブレイヤ監督。上映後のティーチ・インを一部抜粋してみる。

 −−劇中で男性器の張り型が使われていますが、本当は本物を使いたかったのではないですか。そうなると、タイトルも変わってきてしまうかもしれませんが。 
ブレイヤ監督 そうね、以前撮った「ロマンスX」はポルノのようなタイトルにしたから、張り型は必要なかったわ。その後に撮った「ファットガール」という作品では10ページにも及ぶベッドシーンがあったのだけど、男優が勃起していない状態で撮影をしたくなかった。その時に張り型を使ったのだけど、男優に試着させ型を取ったりとかなりの苦労があったわ。俳優はかえって恥ずかしい思いをしたかもしれない。この作品では検閲について考えたかった。映倫の検閲ではなく、自己検閲、私たちが持っているはじらい、尊厳についてね。
−−劇中劇の主演女優を演じるロクサンヌ・メスキダさんに。映画の中で最初は下手な女優と言われていたのに、最後には感動的な演技を見せます。下手な演技との使い分けは大変だったのでは? 
ロクサンヌ 俳優が上手でないシーンは単純で簡単なものなの。ああいったシーンは逆に楽しめたわ。 
 −−アンヌ・パリローさんに。あなたが演じた監督の思想、つまりブレイヤ監督の思想に100%納得することはできましたか。それとも、何らかの話し合いを持ちつつ、役を作っていったのでしょうか。 
アンヌ ブレイヤ監督は決して即興で撮影に入ることはないの。つまり、シナリオに私の台詞全てが書かれていたわけだけど、それを読んで私は心を動かされたわ。自分が嫌だと思う台詞を言うことはできないし、真実だと思えないことをそれらしく言うこともできない。だから、私は彼女の思想に100%共感したと言えるでしょうね。
 役づくりについてはブレイヤ監督は作りこんでいくことはしない。予期しない、彼女が考えてもいない反応を待って撮影を始めるの。それが嫌だった時、彼女は意見をする。役者から出てくるものをひたすら待つような演出なのよ。
(取材・文 寺島まりこ)