「愛する息子を我が家から追い出せ!」ブラック・ユーモアを交えて家族の、人と人の繋がりを描いたコメディ『タンギー』。22日のフランス映画祭での上映時には、タイトル・ロールを独特の味わいで演じ、2001年セザール賞主演男優賞、有望若手男優賞にノミネートされたエリック・ベルジェさんが、タンギーと関係を持つ日本人女性を演じたサチさんをエスコートして登場。「今回この映画祭で上映でき、またサチさんも来てくれて嬉しい」眼鏡の奥から悪戯っぽい瞳は、タンギーまんま。映画は今作が初出演のサチさんも、「現場はアットホームでリラックスして演技ができました」と撮影を振り返る。彼女は完成した作品は未だ観ていないということで、この日に客席から鑑賞した。
 爆笑させられながらも、見事に決まったハッピーエンドにすっかり満足げな客席。エリックさん、サチさんを迎えてのティーチ・インもその結末を受けて和やかな空気の中で行われた。
 親離れしないタンギー君世代、実際にフランスにいるのでしょうかと言うのは、年配風の男の方からの質問。「僕は20歳で自立していたし、友人達もほとんどがそうだったんで、これまではあまり考えたことはなかったけれど、この映画に出てからこうした現象についての話をよく耳にするようになったよ。親離れしない子、子離れしない親どちらもあるよね。経済的な理由で独立できない成年と言うのも確かに歩けど、タンギーは経済的にも社会的にも愛情的にも問題無い。それが何故家を出ないか、そこから喜劇が始まるんだ」。劇中の中国語、日本語には驚かされたファンが多いようだが、これはコーチについて発音のみをみっちりと練習したもの。撮影に特に苦労はなかったが、終盤近くの食卓の場面では父親役のアンソレ・デュソリエ氏がコップを叩きつける場面では、何度も何度もテイクを重ねしまいには、壊れてないコップが無くなるのでは?と不安が過ぎるような熱の入りようだったらしい。
 なお、本作で映画デビューしたサチさんは本職であるパリ・コレ関連の渡仏していた際に、今回の映画の話をいただいたそうだ。エティエンヌ・シャティリエーズ監督を初めスタッフの人たちも温かい人ぞろいで、時間的にハードな日もあったが、あっという間の楽しい撮影だったと語った。
(宮田晴夫)

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フランス映画祭横浜2002

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タンギー