舞台に登場したジャンヌ・モローとエーメリック・ドゥマリニー。質問に答えるときにドゥマリニーの手をそっとつかむジャンヌの動作。まるでスクリーンからデュラスとヤンが抜け出たといっても違和感のない、とても自然な動作だった。そしてたくさん寄せられる質問に対して、ジャンヌ・モローはエレガントで落ち着きのある素晴らしい受け答えをしてくれた。「マルグリット・デュラスという知っている人物を演じるのは演じやすかったか、どうか」という質問にはあくまでもジャンヌが演じたのはマルグリット・デュラスではなく、本の中のMD(マルグリット・デュラス)であるとしたうえで「才能がある女優はマネが上手な女優ではなく、一人の人間の人生を再び構造し、それを映画・芸術に映し出せる人です。」。
 「日本ではみんなに看取られて死ぬという習慣があるのですが、フランスではどうでしょう」という質問には、日本の伝統社会について学んだときに、高齢者は一人で死ぬことを好んでいると記憶していると踏まえた上で、「人生は一つの到達点。死もまたなにかに向かう出発点。死の瞬間を一人でいたいと私は思います。結局重大な危機などに面したときに、解決策をみつけるのも自分一人なのですから。」。そしてヤンがデュラスを愛したのは作家だったから愛したのかという問いには、ドゥマリニーは「書くことがなかったらこれほどの愛にはならなかった」と答え、ジャンヌは「(デュラスが)なにも書いてなかったら、(ヤンが)本を読まなかったら愛はなかったのではないか」と答えている。10年前からスランプ気味だったデュラスと自殺を考えていたヤン。年齢と死を乗り越えて結ばれる愛があったと語るジャンヌ。そして最後に「この映画はMD(マルグリット・デュラス)への称賛であり、すべての女性のアーティスト(クリエーション)をする人への称賛、愛に対する称賛です。」と語り、ニッコリと笑顔で「肉体よりも精神の人生の方が長いのですから」と舞台を後にした。(Mika Saiga)

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フランス映画際横浜2002