俳優、エッセイストなどマルチな活躍を展開している利重剛監督の6年ぶりの劇映画となる『クロエ』が初日を迎えた。映像化不可能と言われたボリス・ヴィアンの小説を、独自な表現とシンプルな物語を活かした人間ドラマとして映像化された本作は、ベルリン映画祭をはじめ各国の国際映画祭でプロからファンまで幅広い層から高い支持を経てのロードショー公開に、朝早くから多くのファンが集まったシアター・イメージフォーラムでは、利重剛監督と運命的な恋人を演じたともさかりえさん、永瀬正敏さんが来場し舞台挨拶が行われた。まずは、その3人のコメントを紹介しよう。

利重剛監督——スタッフ・キャストの一人一人が画面の隅々まで思いを込めた映画なので楽しんで見ていただければと思います。映画というのは皆さんに観に来ていただいて初めて完成、100人の人がいれば100本の映画が皆さんの心の中で出来上がるものだと思っています。ですから、朝早くから多くの方に来ていただいて本当に感謝しています。

ともさかりえさん(クロエ役)——こうして皆さんの前でご挨拶できる日がやっときて、本当に嬉しく思ってます。撮影してから2年くらい経ちましたが、まだまだ鮮明にクロエちゃんが生きている感じ、すごく不思議な時間を残してくれた映画です。

永瀬正敏さん(高太郎役)——もうこれ以上できんというくらい精一杯やりましたので、観てください。

 さて、本作の話題の一つは、元プリンセス・プリンセスの今野登茂子さんが、サウンドトラックに初挑戦、久々のオリジナル・アルバムでもある。というわけで、HMV新宿SOUTHでは映画公開&オリジナル・サウンドトラック発売記念インストア・イベントとして、今野さんのミニ・ライブと渋谷での舞台挨拶終了後駆けつけた利重監督、ともさかさんを迎えてのトークショーが開催された。利重監督と今野さんの出会いは、3年前NHKで放映されたシルク・ロードの現地中継特番で一緒に仕事をしてから。本作の音楽にピアノを考えていた監督は、以前の仕事で「いい奴だなぁ」と思った今野さんに依頼したそうだ。

今野登茂子さん(音楽)——利重監督から「登茂ちゃんなら心でピアノを弾けるのでは」と言われまして。この『クロエ』という作品はすごく繊細な映像作品なので、リズムのある音楽ではなくピアノの単音のようなイメージでとお話をいただきました。プリンセス・プリンセスの頃のわかり易い曲作りとは違った難しさがあり、監督から駄目だしもされましtらけど、一緒にラフ編集された映像に曲を当てていき、ぴたっとあった時はすごく嬉しかったです。

 この日のミニ・ライブでは、サウンドトラック収録曲の中から、“ふたり”“彷徨い”“クロエ”の3曲が演奏され、いずれも切なくしかし暖かいピアノの音色に、会場に集まった観客は静かに聞き入っていた。

なお、『クロエ』はシアター・イメージフォーラムにて、ロードショー公開中!。シアター・イメージフォーラムでは6月28日と7月5日にもトーク・イベントが開催される予定だ。
(宮田晴夫)

□作品紹介
クロエ