今年に入ってからいよいよ日本映画界でもブームが爆発しそうなショート・フィルム。当コーナーでも『jam Films(ジャムフィルムズ)』、『パルコフィクション』といった新しいエンターテイメントを創造する邦画オムニバス作品のレポートをお届けしてきたが、現在また1本のオムニバス・アクション映画が生まれようとしている。
 『KILLERS(キラーズ)』と題されたこの作品は、5人の監督が“殺し屋”というテーマのみを共通項に、それぞれが個性を盛り込んだ独立した5本の短編アクション・エンターテイメントを監督、ビッグショットの手によるリアルな銃器効果との相乗効果で、新しい日本製アクションの境地を見せつけてくれる作品になりそうだ。
 今回作品を担当する5人の監督の面子は、押井守、きうちかずひろ、大川俊道といった自らの世界を確立している実力派に加え、月刊『Gun』誌上のビデオコンテスト“ガンコン”で高い評価を得た河田秀二、辻本貴則の二人が映画監督デビューを果たす。しかもこの企画、実力派と新人等の間で製作費の差は一切なく、5名の監督がそれぞれの持ち味を同じ条件でぶつけあう、まさにガチンコ勝負状態なのだ。
 5月20日の夜、横浜にあるマイカル本牧にて閉店後の地下駐車場で製作順としては4本目となる『Pay 0ff』の撮影が行われた。監督・脚本・撮影は、マンガ家でもあり『共犯者』(99)などヴァイオレンスの効いたクライム・アクションに定評のあるきうちかずひろ。4年ぶりの新作としてメガフォンを握った。きうち監督のアクション、そして何よりその絵作りに拘る撮影は、リハーサル、ショットを繰り返しスケジュール的には少々押し気味だが、その熱意はスタッフ・キャストの間にも共有され、緊張感がありながらも、刺々しさは全く感じられない。多分、翌朝までにおよぶであろうという撮影の合間をぬって、きうち監督と出演者陣が、今作に関して語ってくれたことをレポートしよう。

Q.出演者の皆さんに、役柄についてお願いします。
ハント ケーシさん ——スパシェネフという謎の人物役のハント ケーシーです。ヒールだと思っていただければと…素晴らしい役で感激しています。
酒井伸泰さん ——泉晶夫役の酒井伸泰です。胡散臭いチャラチャラした殺し屋役で、監督の作品に出させてもらってるだけで幸せなのに、今回は初め主役までやらせてもらってなんだか信じられないです。
山下真希さん ——リン役の山下真希です。少し変わった女の子の役です。
井上千尋さん ——ケイ役の井上千尋です。スパシェネフの手下みたいな女でとても暴力的です。
秋葉祐希さん ——ジェイ役の秋葉祐希です。一番この中でファッショナブルで、いつもケイにいじめられています。

Q.監督に、この作品についてお話ください。
きうちかずひろ監督 ——今回は5人の監督によるオムニバスということですので、皆さんガン・アクションで撃ちまくる作品を撮るのだろうなと思い、敢えて発砲シーンの少ないものにし、そこに至る過程を描きたいと思いました。割と地味な、渋い線を狙った作品になると思います。

Q.今回は20分弱の短編作品ということで、これまで撮られてきた長編作品とはどのような部分で違う作品をねらわれたのでしょうか?
きうち監督 ——20分という枠の中でどういった作品を作るかと考えたときに、長編のダイジェストみたいな作品になるのは否だというのがありましたので、一つのシークエンスだけをやろうという感じです。90分なりの作品の中盤の見せ場をそっくりそのままやるつもりで作りました。そこの部分だけは、じっくり見せる。事件の発端から結末までを見せようとすると、どうしても中途半端になりがちだと思いますしね。

Q.オムニバス作品ということで、他の監督の作品を意識しここは違うといったような見せ場があったら教えてください。
きうち監督 ——今回やらせてもらうことが決まった段階で、他の監督のキャラクター…どういった作品を作られるかという部分は判っていましたので、自分がやりたい作品をやれば違ってくると確信してましたので、あまり意識したわけではないですね。ただ強いて言えば、先ほどお話したように、逆にあまり撃たなければその方が差が出るかなくらいですね。後は、他の方はどちらかというとアクションに拘りを持たれていて、僕はどちらかというと絵の方に拘って作っていますね。兎に角、カッコよく決まる絵…そのせいでちょっと遅れてますがね(笑)。

Q.絵作りを重視されているとのことですが、まわしているカメラは1台ですよね。そのあたりは、御本業のマンガの方と関係あるのでしょうか?
きうち監督 ——基本的には、1キャメでフィックスの絵で繋ぎたいというのが理想なんですよ。ただ、実際はなかなかそうはいかないですが、パンとか手持ちはなるべく少なくしようと思ってるんですよ。そういうのが好きというのは、本業の感覚があるからだと思いますね。複数のカメラをまわさないのは、全てがいい絵というのは作りにくいんで、照明にしても一つのカメラに対していい光をあててもらうといったことがありますので、基本的にワンキャメです。
また後処理でフィルムの質感を出すのではなくて、現場で上がりの絵を見たいというのがありましたので、そういう特殊な設定でカメラを回しています。

Q.出演者の皆さんに、役柄について一言づつお願いします。
ハント さん ——きうち監督は1カット、1カットのテーマが非常に明確なので演じていて楽しい。決して楽な撮影ではないが、楽しい。撮影にくるのが楽しみな仕事は、本当〜〜〜に!久しぶりです(笑)。
酒井さん ——監督とは、プライベートでもお付き合いさせていただいているので、今回撮影が4年ぶりなんですけどプライベートの部分と仕事されている姿とで違うようで、厳しい部分があって結構いっぱいいっぱいというのが正直なところですが、現場に入った瞬間でどこまでできるか…というのを日々やらせてもらっています。
山下さん ——今夜から、リンという役柄が思いっきり出てくるんで、監督が想像している芝居が出来るように頑張りたいと思います。
井上さん ——お芝居をさせていただくのは今回が全く初めてで、何をどうしたらいいかわからず現場にいる感じで、役作りもよくはわかりませんが、カッコいい女の人に見えるよう頑張っています。
秋葉さん ——昨日、たっぷり寝すぎてきたら顔色が良過ぎると言われ、昨晩は朝まで飲んで疲れた顔で来ようと思ったんですが、余計調子が良くなっちゃいました(笑)。

なお、『KILLERS』は、この後押井守監督編が撮影に入り、全体としては今秋の完成・公開を目指すとのこと。心待ちにしたい。
(宮田晴夫)

□作品紹介
『KILLERS』