ゴールデン・ウィーク中日の5月2日、HMV渋谷2階イベント・スペースにて、その“カッコよくピース”を身上とする映像に魅せられたファンが多い中野裕之監督のトークショーが開催された。
当日は渡辺祐氏の進行により、トレードマークともいうべきテンガロン・ハットにジーンズ姿の中野監督に加え、『Stero Future』『RED SHADOW 赤影』の2作品で中野ワールドに参加している麻生久美子さん、同じく『Stero Future』の桃生亜希子さんもゲストとして登場。女優のお二人も、この日は中野ワールドに相応しく、シンプルなナチュラルさが溢れるジーンズ姿で、温かくピースフルな一時となった。
この日のイベントは、劇場用作品デビュー作である『SF SAMURAI FICTION』(Collector’s Edition版・4月24日ポニーキャニオンより発売)と、昨年の夏東映50周年記念作品として話題を集めた『RED SHADOW 赤影』(コレクターズディスク・4月21日東映ビデオより発売)という中野監督作品2作品のDVDリリースを記念して開催されたものだ。映像への拘りでは人後に落ちない中野監督ゆえ、どちらも映像特典満載な2枚組仕様となっている。「『SF〜』の1枚は、阿部敦史監督による“SAMURAI NON FICTION”という1本の作品で、単なるメイキングじゃなくて本当のドキュメンタリーになっていて、結構可笑しいですよ。僕のスタッフや一部の業界人の間で出回っていたものの、公式リリースです。ピーちゃん(桃生さん)も出てますね。『〜赤影』も盛り沢山ですが、なかでも麻生久美子フィーチャリング“a days with 飛鳥”は撮影終了後4ヵ月かけて編集したものです」(中野監督)とのこと。そう、この発言からも明らかなように、現在中野監督はこの2人の映画女優のプロモーションするためだけに生きてきたと言って憚らない。「TVドラマとかはやらずに、映画だけで活きていくその姿勢は、是非応援したいんですよ。それに2人ともすごくいい人で、気持ちがいいんですよね。彼女達を見てると元気になれるんです。」(中野監督)。
そうしたムーブメントとして、中野監督は2人をフィーチャーした写真集『SF Sweet Female』(p2p出版)の撮影・刊行をはじめ、短編映画の監督、そして御本人の映像作家としての集大成の意味もある展覧会“Peacedelic”(渋谷パルコ スクエア7にて5月26日まで開催中)などを展開中だ。なお、トーク中も自然体になかのよい2人だが、監督曰く俳優としてのタイプは全く正反対とのこと。「久美ちゃんは、百の顔を持つ女(笑)。一本一本どころか、時には同じ作品でも2時間くらいで顔が変わってしまって。知らない顔をいっぱい持ってるんです。一方、ピーちゃんはずっと同じ素敵な個性を持っている方。だから無理に役に押し込めるよりも、その個性を活かした役を演じてもらうのがいいんです」(中野監督)。「カチンコがなると役ならなんでもやっていい時間なんです」(麻生さん)、「私はそういう感じはないかな…いつも同じ」(桃生さん)と、2人の役へのアプローチに関しての言葉は、まさに監督の話しとおり。映画と写真で緊張しないのは、「映画」(麻生さん)「写真」(桃生さん)とこちらもきれいに分かれた。
桃生さんが中野監督と出合ったのは、6年前のとあるパーティ。監督の自然への思いの話に思わず涙が出てきちゃったとか。麻生さんもまた、『SF』の顔合わせで初めて会った時の中野監督のアドバイスで、迷っていた留学先をロンドンに即決したそうだ。それぞれ運命的とも言える出会いをした2人だが、トークの節々に監督への親愛の情が溢れている。この他、演技指導や現場での話など興味が尽きない様々な話題が交わされた。最後に2人の中野監督へのメッセージを紹介しよう。「監督の撮る映像が凄く綺麗で大好きなので、そういう監督らしさをいつまでも持っていて欲しいです」(麻生さん)、「お婆ちゃんになるまで撮ってくれると言ってくださるんですが、私も成長していくつもりですので、そんな過程を見ていって欲しいです」(桃生さん)。そう、これからも観ると元気になる2人の姿を、見続けたいのは観客側の願いでもあるのだ。
イベントの締めは、HMV渋谷店で中野監督2作品のDVDを購入したファンの方を対象にした中野監督直筆サイン入りフライヤープレゼント&2人の女優との握手会で、多くのファンが楽しい交流の一時を過ごした。

□作品紹介
RED SHADOW〜赤影〜
STEREO FUTURE
(宮田晴夫)