『ウォーターボーイズ』の矢口志靖監督が、『裸足のピクニック』で共同脚本を書くなど矢口監督曰く師匠であり、往年のライバルでもあるクリエイター鈴木卓爾監督とガッチリとタッグを組んだ新作が完成した。内外でショート・フィルムの魅力と注目が高まりつつある昨今だが、ワン・シーン、ワン・カットの短編連作『ワンピース』を共同制作し、短編という表現形式でそれぞれの個性を強く反映させてきた二人の新作もまた、5篇の短編からなるオムニバス作品。しかも、舞台は本作公開予定館であるシネクイントもその中に内包する“ナウでヤングな若者が集う”パルコを舞台にしたエンターテイメント作品で、タイトルもずばり『パルコフィクション』!
 本作の完成披露試写会(実際前日の深夜に仕上がったばかりという、完成披露=ほとんど初号試写という、できたてほやほやさ!)が、4月25日シネクイントにて開催され両監督が舞台挨拶を行った。

矢口志靖監督
第1話『パルコ誕生』、第2話『入社試験』、第4話『バーゲン』
——普段僕は鈴木さんと二人で『ワンピース』自主映画を作っているんですが、『ウォーターボーイズ』のようなちょっと大きな作品の後は、規模が小さくフットワークの軽い作品をやることはリハビリにもなって気持ちのいいものなんです。今回、パルコを使ったワンピースのような作品ということで、ミニDVカムでかなんかでぱっと撮れるものをと始まったものが、気づいたらこんなビッグ・プロジェクトになっていて僕もびっくりしてます(笑)。軽い気持ちで観て頂けたら嬉しいです。

鈴木卓爾監督
第3話『はるこ』、第5話『見上げてごらん』、エンディング『ポップコーン・サンバ』
——クランク・インできると判ったのが2ヶ月前で、撮入したのは3月でしたので、丁度一月でこうして完成披露が行われることは、実際的な意味で夢を見ているような気分です。とても珍奇な作品を撮りたいと思いました。我々の日常は変わらない日々の中で楽しさやつまらなさを見つけていくようなものですが、そんなところに深海から奇妙な鮫がいきなり出てきたみたいな、予想もできない珍しいことが起こる。それが珍奇であり、僕が映画を撮る理由もそこにありまして、そうした珍奇なものをいかにリアリティを持って見せられるかということに挑戦しました。

各エピソードのタイトルは上に記載したとおりだが、不条理な笑い、普通のドラマと同居するファンタジー、日常「あるある…」とか思えてしまう(多分、実際に同じ状況を体験することはないだろうが)リアリティ溢れる感情…それぞれが、実に個性的でバラバラな作品が並びつつ、通して見てもしっかり筋が通っているのが流石!一つの枠組みを持った古典的な構成に則りながら、なんとも新しい感覚が心地よいエンターテイメントが仕上がったようだ。

なお、『パルコフィクション』は渋谷、シネクイントにて、7月20日(土)よりレイトロードショー公開!また、19日(金)には“パルコフィクション前夜祭”も開催予定。こちらでは未公開のメイキング映像や、監督のトークなどのイベントを企画中とのこと。詳細は続報を待て!

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3098
(宮田晴夫)