品川アイマックス・シアターオープニング・イベントにて若田光一飛行士宇宙撮影について語る
欧米ではディズニーに次ぐ世界二番目のフィルム・エンターテイメントと称され、日本でも熱心なファンが増加中のアイマックス製作の巨大エンターテイメント作品群。先頃、新宿タイムズスクエアのアイマックス・シアターが惜しまれつつ閉館したが、新たなアイマックス作品の都内常設上映館が、4月25日にオープンした。メルシャン品川アイマックスシアターというこの新設館は、同日オープンした品川プリンスホテル エグゼクティブタワーの6階にあり、お馴染みとなった巨大スクリーンで展開される3D&2D作品が、大型映画の魅力を常時気軽に堪能させてくれることだろう。
今回オープニングに選ばれた作品は、史上初の3D宇宙映画であり、ロッキード・マーチン社、アメリカ航空宇宙局、宇宙開発事業団の全面協力体制で、アイマックスフィルム最高の製作費をかけ完成させたドキュメンタリー『スペース・ステーション』だ。国際宇宙ステーション建設のミッションの模様を綴った本作は、実際にミッションに参加している宇宙飛行士たちが3Dカメラをまわし、臨場感あふれる宇宙空間を観る者に体験させてくれる。
25日の朝、メルシャン品川アイマックス・シアターにて、本作のプレミア上映と、本作にも参加している宇宙開発事業団宇宙飛行士である、若田光一氏がヒューストンより里帰りをし来場するというオープニング・イベントが開催された。若田氏は、開場前には3階の正面入口部分で、西町インターナショナル・スクールの勿論宇宙が大好きで、ちょっと興奮気味の子供たちとまずは記念撮影。続いて劇場内に移動すると、場内の子供たち、来賓、マスコミ関係者などにむけ挨拶をした。
「国際宇宙ステーションのミッションは、現在世界16カ国の協力で進められていて、日本もその重要な役割を果たしています。私はSTS-92でのミッションに参加し、その時に私が撮影した映像も作品の中に含まれています。映画の撮影はカメラが大きく、また宇宙飛行士が映画監督、大道具、小道具、出演を兼ねねばならず、またフィルムの量の制約など様々な苦労がありました。今回はそうした中での撮影により、宇宙で我々の眼前に広がる光景が、観客の皆さんがそこにいるかのように感じられると思います。日本の宇宙実験棟“希望”も今から2・3年後には建設される予定です。これからも、応援をお願いします」。
この後若田氏は、来場した観客らと一緒に作品を鑑賞。その後、記者会見に出席し宇宙空間での撮影に関してなどを語ってくれた。
Q.作品へのコメントをお願いします。
——私も日本語版を観るのは今日が初めてだったんですが、臨場感あふれ宇宙に行ったような感じで、ご覧いただけたのではないかと思います。これまで宇宙に行ったとき、スペースシャトルが滑走路に戻り、それまで機内浮いていた鉛筆などが浮かなくなり重力を感じた瞬間に、それまでの宇宙での素晴らしい経験が、現実ではなく夢だったような感じがするのですが、今日こうしてこの作品を観ていると、私が宇宙にいた時の感覚が甦るなと思いました。こういった映像で日本の宇宙飛行士が活躍する姿を観て、今日はお子さんたちも来ていましたが夢をふくらませてくれればいいなと思います。
Q.持っていったフィルムは船内用4分、船外用8分とのことですが、撮影にはストップ・ウォッチで声をかけながら行うなどされたのですか?
——音声も同録なので、手信号のみでやっていました。大体、ひとコマ15秒くらいずつですね。作品中船長のダフィさん、パイロットのメルロイさんの場面等は私が撮った部分ですが、あれを撮ったのがフィルムの残り最後の方で撮りなおしなどはできない状態だったんです。また日中の照明で撮影していたのですが、シャトルは90分で地球を一周しますので、日没の方に入るギリギリのタイミングで撮れたなど、時間的な部分での戦いもありましたね。
Q.3Dの画面ということで、フレーミングや奥行きなどで苦労された点などございますか?
——3Dカメラは撮る方もステレオなんですが、モニターではその右側だけしか見れないんです。ですから船外活動用の手袋が左側からふわふわと流れてくる場面等では、時間差・視差がある中で右側で見える部分で撮る、また照明が届く焦点距離の範囲以内でそのものを捉えることなど難しかったです。その場でこんな場面を撮ろうというのではセッティングなど間に合いませんので、ミッションの前に、どのような場面を撮るかということを綿密に決めておき、アメリカのジョンソン宇宙センターで実際にアイマックスのカメラを使って撮影の準備をし、撮影に臨みました。
Q.事前にかなり訓練をされたということですが、訓練時と実際に宇宙でのものとで、状況が違うようなことはありましたか?
——実物のカメラを使用して訓練しましたので大きな違いはありませんでした。ただ実際の宇宙でのミッションの合間をみて撮影を行うということで、時間的にはプレッシャーがあったかと思います。それと、船内用カメラのフィルムのマガジンは2分分で、1本撮り終わったら交換しなくちゃならないのですが船内には暗室はありません。それで大きな布の中にカメラごと入れて手探りでフィルムの交換を行わなくてはならないのですが、地上でやっても難しい作業だったので無重力化で上手くできるか不安もありましたが、問題なくできてよかったと思います。
Q.現実感のある映像ですが、これだけは実際に宇宙で体験しないとわからない、違う…といったような部分はありますか?
——視覚、目から見る情報という点ではこの作品はかなり現実に近いものを表現していると思います。それ以外の部分…無重力感や体液が上のほうにシフトしていることによる顔のむくみ、生理的な感覚などでは宇宙に行かないとわからないものはありますが、人間の感覚の中で視覚はひじょうに大きなものなので、そういう意味では、実際に宇宙に行った感覚が甦ってきたと思います。
テレビ等ではあまり感じられないのですが、宇宙から地球を見ると、特に雲は3次元的に奥行き感を持って見えますが、そういう観点からもこの作品の映像はよく捉えていると思います。
実際、3Dで描かれる深遠さをたたえた宇宙空間、そして宇宙船の構成部品などが目の前に迫ってくる感覚は、アイマックス3Dならではのもの。作品鑑賞中、多くの子供たちが目前に迫るそうした立体映像に向けて手を伸ばしていたのも、実に納得のスペース体験なのだ。是非、巨大スクリーンで体感してみよう。なお、『スペース・ステーション』はメルシャン品川アイマックスシアター及び軽井沢のアイマックスシアターにて、ロードショー公開中!また。5月には敦賀、7月には大阪それぞれのアイマックス・シアターでの上映も決定している。
□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3086
(宮田晴夫)