フランス国立映画センターの特別協力や、ロケ地の広島市などの協力で製作された吉田喜重監督が脚本・監督が14年ぶりにメガホンを握った作品『鏡の女たち』の完成披露試写会が都内で行われ、監督ならびに主演の岡田茉莉子さん、田中好子さん、一色紗英さんが舞台に立った。
この作品は、20世紀を振り返る上で、忘れることのできない原爆投下で被災地となった広島。被爆者である老婦人と、記憶を失い失跡していた娘、その孫の3世代を中心に忘れることのできない半世紀前の広島で起きた出来事をたどりながら、それぞれの絆を再認識し、関係を修復しようとする女性たちの物語。老婦人の愛役には監督の妻でもある女優の岡田茉莉子さん、娘・美和役は田中好子さん、孫の夏来役は一色紗英さんが演じた。
岡田茉莉子さんと吉田喜重監督とのコラボレーションは、『秋津温泉』(62)が出会いであり、その後『告白的女優論』(71)が最後の出演作の監督をしていないため、約30数年ぶりになる、また吉田喜重監督も松田優作主演の『嵐が丘』(88)以来の14年ぶりの監督作品になる。
舞台で、吉田喜重監督は「私には原爆のことを描く権利があるのかと自分の問いかけたこともあり、すでに原爆で亡くなった方も多く、描くことは不可能ではないかと考えたこともあります、この映画はフィクションとして完成した際にはこの映画は観た方の想像力で命が与えられます。映画を観て原爆は何だったのか、どういう風に生きてきたのかを考えていただければと思います。」
また主演の岡田茉莉子さんは「脚本を頂いて、久しぶりの女性映画で台本を読んで涙がこぼれました。また、昨年は映画女優としてデビューして50年目にあたり、監督とめぐり逢え、スタッフの方に育てられ、多くのファンの方に支えられ、半世紀女優として生きてきました。その節目にこのようなすばらしい作品に出演できたことを本当に感謝しております。私は集大成になればと命がけで演じてきました。あとは皆さんの批評をいただくだけです。」
また、田中好子さんは「記憶喪失という難しい役を頂き監督さんや皆さんのご指示を頂き自分なりにがんばって演じてみました。」と一色紗英さんは「すばらしい女性映画だと思います」とコメント。
女性映画で、20世紀中に撮りたかったという監督の「原爆」をテーマに親子3世代の女性を描いた作品は、サスペンスタッチの雰囲気もあり、スクリーンの中の女性たち、それぞれがもつ世代のテーマも盛り込みながら、それぞれが太い絆を作っていく男性では描くことのできない女性の持つ不思議な力が溢れている印象を持っていると感じることのできる作品。
今年の5月のカンヌ映画祭に出品を目指し、今秋公開が予定されている。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2667
(YASUHIRO TOGAWA)