既成の映画賞には飽き足らない映画賞をスタート地点に、映画の様々な分野の最前線で闘うプロフェッショナルたちが選考を行う、日本映画プロフェッショナル大賞は、その先鋭性が映画好きの間にすっかり定着し、指標とするファンも多い。今年で11回目を数える“日プロ大賞”の授賞式が、4月6日池袋の新文芸座にて多数の立見もでる盛況の中で開催された。日プロ大賞実行委員長の大高宏雄氏とMCの伊藤さとりさんの進行で登壇した受賞者は、それぞれ授賞の喜びと各作品についての想いなどを語ってくれた。以下、各章の授賞理由、及び受賞者コメントを紹介しよう。

新人奨励賞:宮崎あおい(『EUREKA』)「犯罪の裂け目に広がる人間の執拗な劇の中、微細な魂を可能な限りの演技力で表現しえたことに対して」
——すごい映画が好きなので、映画で賞をいただけてすごく嬉しいです。『EUREKA』では1ヶ月九州にいて、お兄ちゃんと一緒にやれすごく仲良くなれたことが嬉しかったです。すごく難しい作品だったけど、色とか綺麗でしたね。今まではいじめられる役とかが多かったんで、今度はいじめる役をやってみたいですね(笑)。

新人監督賞:富樫森(『非・バランス』)「時代閉塞の一因である校内暴力を背景に、自己を封印した少女の生きる力を、精一杯見つめたその真摯な演出力に対して」
——一生一度の舞台なのに出席できず残念、そして申し訳ありません。十代の女の子の一夏の話を撮りたいと思いつづけていました。その夢が叶った『非・バランス』をプロフェッショナルと認めていただいたのがとても嬉しいです。プロとして撮り続けて行けるよう精進します。ありがとうございました。函館より。(富樫監督は新作の撮影のため欠席、藤田義則プロデューサーが代読)

監督賞:三池崇史(『殺し屋1』、『ビジターQ』他)「留まる所を知らない映画への欲望、溢れんばかりの表現への迸り、この人の勢いはもはや誰にも止めることはできない、ことに対して。
——すごく嬉しく思います。大体しかとされ系の監督なんで、大高さんがいなければ今の自分も無いと思っています。これまでの授賞は、高崎映画祭とゆうばりファンタの市民賞、そしてここと。僕の作品は海外の映画祭などでも、いわば息抜きみたいなもの…ってことでご利用いただいていただいているようなんで、是非お楽しみいただければと。変わっているからと余興としているようで、それもこれまでの自分の生き様そのままだなぁと(笑)。生きてきたものが反映されるって、やはり映画とは侮れないものだと思います。

主演女優賞:麻生久美子(『回路』『贅沢な骨』『0cm4』他)「荒々しい体感を持った鮮烈のデビュー作から早四年、既に日本映画第一線の女優に成長し昨年は多様な役柄に挑戦、大器の片鱗を大きく垣間見せたことに対して」
——3作品で主演女優賞をもらったことなどないですし、今年初めて主演女優賞と言う賞をいただいたので本当に嬉しいです。作品はいただいたお仕事の中で演りたいなと思ったら、相談して決めています。『回路』は脚本を読んでも全然判らなかったんですが(笑)、やはり黒沢監督の映画だから間違いないと思って。『贅沢な骨』では、ミヤコとサキコという女の子二人が出てきて二人ともとても極端なんです。私はどちらかというとこれまでサキコの方の役柄が多かったので、ミヤコの方を演りたいといって演らせていただきました。すごく勉強になりましたね。

主演男優賞:寺島進(『空の穴』『みすゞ』他)「鬱屈とも倦怠とも無縁の北海道の青年を、時に情けなく時に狂おしく演じきった『空の穴』の演技の精彩さ、ほかに対して
——自分はプロフェッショナルというか、切られ役の大部屋から始まったものですから、そこからプロでの仕事の厳しさから始まったんで、自分が主演男優賞なんかもらっちゃっていいのか?という半分てれくさいような部分もあるし嬉しいのですが、ずっと演り続けてきての励みになるのは確かで、同時に役者さんには色々な所からの出身がありますが、同じように大部屋出身の人にも、頑張りつづければいいことがあるんだなという感じで、頑張りつづけたいと思います。『空の穴』は等身大の日本人の恋愛物であり家族愛とかがからむ作品で、去年日本のお客さんにたくさん観てもらって、本当に嬉しかったです。

作品賞:『殺し屋1』(製作:オメガ・プロジェクト、オメガ・ミコット)「荒れ狂うバイオレンス、許容範囲を超えた表現の彼方にあるのは希望か、絶望か。前人未到の映画世界を構築した、その過激な鋭意に対して」
——ありがとうございます。『殺し屋1』で賞をいただけるとは思っていなかったので、凄く嬉しいです。実は昔、三池さんと会社が一緒で、僕が机においておいた原作を三池さんが見て「やるぞ」と。98年ですから、三池さんも『DOA』も『オーディション』も作る前で、三池さんをもっと有名にしたいなぁ。そしたら僕も有名になるかなぁと(笑)。今回はプロデューサーとして映画をヒットさせたいという気持ちと、三池さんの作品は色々な方がプロデュースしてますがそんな中で個性を出すために、衣装と美術には予算を割きました。(宮崎大プロデューサー)

特別賞:シンクロ・ボーイズ「躍動する肉体、踊る集団、文句無の明るさ、楽しい日本映画の創造に貢献した24人の少年達の奮闘ぶりに対して」
——このような素晴らしい賞をいただき、僕たちは新人の役者だったんですけど、今後の活動の新たな自信になったと思います。これからも皆、役者として頑張っていきたいと思いますので、これからも宜しくお願いします。ありがとうございました。(当日、舞台には23人が登場。代表してのコメントは金子貴俊さん)

 また授賞式終了後の特別上映作品としては、作品賞授賞の『殺し屋1』と第10位の『トーキョー×エロティカ 痺れる快楽』というそれぞれR-18指定の2作品が選ばれたことも、実にこの映画賞らしい。上映前には「10位の瀬々です。1位の三池さんの前でちょっと恥ずかしいですが、来年は1位を目指します。妙な映画になっていて難解な所もありますが、ただぐずぐずに観てかっこいいなぁと思っていただければ幸いです」(瀬々敬久監督)、「普通の書店で普通にある原作が好きで、本屋の方が映画館より面白いと思えた。そんな刺激が劇場にあってもいいんじゃないかと思った」(三池監督)とそれぞれコメント。
 なお、第11回日プロ大賞作品賞の順位等、詳細は下記の頁をご参照のこと。

□第11回日本映画プロフェッショナル大賞発表
http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=2350

□日本映画プロフェッショナル大賞公式HP
http://www.filmcity.co.jp/fc/n/npro/11th.htm
(宮田晴夫)