近年日本でも“アメリカン・ショート・フィルム・フェスティバル”をはじめ、各種映画祭での上映や、数本まとめてのレイトショー公開など、映画ファンから注目を集めつつあるショート・フィルム。しかし、日本の商業作品としては、まだまだ未開と言えるこの分野で、世界に通用するエンターテイメント作品としての日本映画を目指す企画『jam Films(ジャムフィルムズ)』がスタートし、4月2日にアミューッズピクチャーズ試写室にて製作発表記者会見が開催された。
 会見ではまず、本作のプロデュースを務める河井信哉氏より企画に関しての概要等が説明された。フジテレビで(4月よりアミューズピクチャーズに出向)ホイチョイムービー3部作をはじめ数多くの邦画話題作をプロデュースし、洋画の宣伝・買い付けを行ってきた河井氏は、昨年第3回が開催された“アメリカン・ショート・フィルム・フェスティバル”で審査員を務め、その際に海外短編作品のレベルの高さを痛感し、そうした中で同映画祭に講師として参加し、本プロジェクトにも監督の一人として参加している飯田譲治監督との会話の中から、日本でもエンターテイメントとして海外作品と渡り合える短編作品をやっていこうということになり、本プロジェクトはスタートした。
 方向性としては自主映画っぽさを排除したエンターテイメントとしての短編を何本か作り観てもらおう。また、オムニバス形式ということで全体を通した一つのテーマを持たせることも考えてはいたが、実際に参加することになった方に限ることなく、企画を打診した多くの実力派監督たちに、それぞれ短編としてこういう企画をやってみたかったという独自のものを持っている方が多かったこともあり、それぞれの作風・個性を活かして撮ってもらうことになった。現在の日本映画界で中核的な活躍を続ける30代〜40代の7人の実力派監督による、8〜15分程度の7作品を1本の作品形体でロードショー公開。そして、短編という形式を活かし、映画以外のメディアでの展開も進めていくとのこと。
 そして、本作でショート・フィルムにチャレンジする監督として、飯田譲治、岩井俊二、北村龍平、篠原哲雄、堤幸彦、望月六郎、行定勲(あいうえお順)という、まさに現在旬と言える7名の名前が発表された。現時点で、飯田譲治監督、北村龍平監督、望月六郎監督の3名は作品を完成(もしくは撮了)していて、7・8月くらいまでに全7作が完成予定となっている。
 続いて、既に作品を撮り終えた3監督のメイキング風景が披露された後、3人の監督が舞台に登場し、挨拶と質疑がなされた。ここでは各監督の、この企画に対する想いと、短編を撮るにあたって感じたこと紹介しよう。

飯田譲治監督
——こういうのをやったら楽しいかな…という結構安易なところから始まりました。7人で競作するということは比べられる怖さがあると思ったのは撮影が終わった後くらいで、きっと皆人のことを考えつつも自分勝手にやるんだろうなと思い、それで7本繋がって面白いものになったら楽しいんじゃないかなと。僕は長編とは違ってコメディをやりたかったので、SF色のあるコメディをのびのびと作らせてもらいました。
アメリカの作家による短編等を色々観て思ったのは、これで勝てるという一つのアイデアが無いと始まらないということ。それを踏まえ、日本でもエンターテイメントとして通用する作品をやっていけたらいいと思ってす。

北村龍平監督
——なんで誰もやろうとしなかったんだろうと思えるくらい面白い企画で、その最初の場に選んでいただいて光栄に思っています。今回他の方々は錚々たる方ばかりで、僕が一番の若造でキャリアも新米。尊敬する方たちとの仕事で嬉しい反面、比べられるっていうのはありますが、僕は良い意味での喧嘩だと思ったんで最初に撮影の手をあげちゃいました。ジャンケンで先出しして待ってるみたいだね…というのはありますが、凄く楽しかったんで二度・三度と呼んでもらいたいと思います。
僕自身は4年位前までは、仲間で集まって制約の中ワン・アイデアで撮ろうという感じだったんで、その頃に戻った感じです。怖くもあるけど、チャレンジしがいがありますね。普通の方はこういう時に、実験的なものやはじけたものを撮るのかなとも思いますが、僕の場合、普段からいかれた作品を撮っているんで(笑)、ちょっと正統的なものを撮ってみたいなと。限られた時間でエンターテイメントを成立させることを履き違えると、ショート・フィルムではなくコントになってしまいます。そういう意味では、今まで僕が長編作品を撮った時以上に、ワン・アイデアという点では一番苦労しましたね。

望月六郎監督
——自発的にエロチックを担当しました(笑)。最初は「短編かぁ…」とかも思いましたが、短編を撮るということの楽しみを味あわせていただいたんで、短編を観ることの楽しさが定着すればこういう機会が増えて行くと思うので、宜しくお願いします。
15分以内という長さは役者やカメラが同じであっても、話を作るときの省略の仕方をどうするかが、ショート・フィルムの難しさだったかなと、今思ってます。一緒に撮った他の方に負けたくないだけではなく、それは日本中の映画青年や映画学校でも撮ることが可能な形体です。そういう方たちに対しても、プロとしての力を見せなくてはならないことは撮りながら意識していました。

既に完成している3作品に関しては、下記作品紹介頁にスタッフ・キャストに関してのデータを記載してあるが、メイキング・フィルム&質疑からはSFコメディ、(カメラを動かさない!)アクション、エロティック・ファンタジーとそれぞれ納得の題材でありながら、短編と言う形式の中で新たなるエンターテイメントへと果敢に挑む様子が垣間見え、実に興味深い。他の4作品とともに、新たな映像の楽しみ方を産み出してくれることであろう。なお、『jam Films(ジャムフィルムズ)』は、2002年全国ロードショー公開予定だ。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3042
(宮田晴夫)