1月より“日本で一番忙しい映画監督”<三池崇史>フェアを好評開催中のHMV渋谷では3月16日の夕方、そのファイナルイベントとして今月末より公開される『荒ぶる魂たち』の三池崇史監督と主演の加藤雅也さんをゲストに迎え、公開記念トークショーが開催された。その模様の一部を紹介しよう。
 トークのスタート前に、三池監督御自身が編集した『荒ぶる魂たち』の予告編が上映された。この予告編には、本編には登場しないカットも出てくる。予告編のために新たに撮り足されたものなのだろうか?実はこの作品、劇場公開版も2時間半近くの長さの力作だが、元々撮ったフィルムのOK分だけでも4時間を超える分量があったものを、劇場版の長さにまで濃縮したものなのだ。だから、惜しくも本編には出てこない場面も多々あり、別ヴァージョンが発表される可能性を示唆しつつ、実際にある場面が使われなくとも、作品の完成に大きく貢献しているのだと三池監督は語る。「あるシーンを体験することにより、俳優は顔が変わります。だから、その場面が無くとも次の場面になった時、役者同士の関係性の変化が現れていればOKだし、そういう意味では贅沢に使わせてもらいましたよ」。また、今回の作品では街中に実際にある光源のみで撮影を行うノーライト撮影を敢行、たまたま車が通り過ぎてそのライトで明るくなったとか、その時々の上京に左右されつつの撮影が、逆に予期せぬ絵が撮れて面白かったそうだ。「東京は明るいし、フィルムの性能もよくなっているから、半端に照明があるよりも無いほうが、いい役者がより光るしね」。なお、本作の中で凶暴な鉄砲玉役として作品にも登場している三池監督、当初予定していた友情出演予定の役者さんのスケジュールが変わってしまってので急遽本人が演じることになったそうだが、物語の発端ともなる強烈な姿と、「マイクを突っ込めばいい簡単な役だから」の言葉の意味は劇場で要チェックだ。
 今回三池組初参加にして、濃すぎるくらいに個性的なキャスト陣の中で、リアルで熱いアウトロー像を演じきった加藤雅也さん。作品の中には、場面設定や音楽面などに関して、アイデアも出している。加藤さん演じる剣崎と恋人との場面で登場する、万華鏡などもその一つだ。「万華鏡は、二度と同じ景色は見れない。剣崎と恋人は付き合っていても、実は同じ景色は見れていない。そんな象徴として、監督に言っていれてもらいました」。観た時には気づいてもらえなくても、後からそうだったんだと思えるような部分に拘りを見せる加藤さん、本作の肌に直接皮ジャンを羽織るというファッションも斬新だと注目を集めているが、新しいものを目指してというよりあくまで主人公の生き方を考えた上のものだということだ。しかし、同時にそこには映画とファッションの在り方についての、提言もある。「昔は映画からファッションが生まれていたのが、今はファッション誌の中から映画へと取り込まれるようになっています。それが、昔のように本に戻ればいいなと」。
 なお、三池監督と加藤さんは、再びコラボレーションをすべく企画を練っているところとのこと。田中という人だけの商店街で、客にパンチパーマをあてる床屋の話『田中Z』と、兎に角“ゴージャス”な企画の二つだ。熱きアウトロー映画に続き、どのような作品に育っていくかも期待しつつ、まずは『荒ぶる魂たち』の月末公開を瞠目して待て!

なお、『荒ぶる魂たち』はシブヤ・シネマ・ソサエティにて、3月30日より独占ロードショー公開!初日には、舞台挨拶も開催される。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2161
(宮田晴夫)